同罪
背中に流れていた髪を切り、肩にやっと触れる程度にしかならなくなった髪に触れながらテアは震えていた。 ツバサの補佐だったリカ、サクラ。諜報部のなかでも忠誠心の高さはとてもあるシドレ、アイ、ワール。何だかんだで面倒見がよくてテアもいくらか世話になったルイト。その他にもツバサの部下でテアと仲良くしている人はたくさんいる。彼らを殺すかもしれない。ツバサが帰ってくると信じて疑わない彼らは、組織の壊滅を目的としたツバサと再開するとき、どう思い、何をするのだろう。 待ちに待ったツバサが帰ってきたと思ったら殺されるのだ。信じていた人に。
「手伝ってやろうか。ツバサ」
テアがはっと声をする方をみた。レヴィは得意気な表情をしており、向かいのツバサは変なものを見るかのような目をした。
「組織には能力者を越えた能力者って云われるウノや死体の管理人なんて云われるカノンもいるんだよ。おまけに謎の天属性を開発した狂研究者もいる。レヴィ、足手まといじゃない?」
「ああ。お前のいた組織には珍しい異能や呪いを持ってる奴がうじゃうじゃいるからな。ディナーにはちょうどいい」
「後悔するよ」
「上等」
「うちの部下たちはみんな強いから覚悟しなよ」
「お前こそ油断してると痛い目にあうぞ」
「さあ、どうかな?」
レヴィの差し出した手に応じてツバサは握手を交わした。
「ツバサ、私……」
「テアは俺たちに手伝わなくてもいいよ。辛いでしょ?」
「……確かに辛いけど……、でも私、ツバサを守りたいから。……ついていく」
「それはつまり、リカやサクラたちに剣を向けるってことだよね?」
「辛くないといえば嘘になる。けど、ツバサがまた傷付くのはもっと嫌」
「嬉しいけど無理をしないでね」
「……平気」
ツバサはテアとも握手をした。テアの弱々しい手を補うように握る。いまはこうして震えているテアだが、いざ剣を握ると我を忘れて戦うだろうことをツバサとレヴィは知っている。
「じゃ、レヴィごちそうさま」
「え?」
「テア、気分転換にどこかへ行こうか。いまのままじゃ組織の本部には迎えない」
「お、おい、ちょっと……」
「さて、どこか行きたいところはある? ん? レヴィ? 誰それ」
「認識されてないのか俺! お前ついさっき俺のこと呼んだだろ!?」
レヴィのささやかなツッコミを無視してツバサは店の外へ向かった。仕方ないとばかりに伝票をもってレヴィは会計に向かい、ひたすら幼馴染みを睨んでいた。ツバサに手をひかれて店の外へ向かうテアは少しだけ困ったように微笑んで見せたのだった。
一方、そのころ組織では諜報部ボスを欠いた状態でウノ、リャク、カノンが集会をしていた。
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