ウノとカノン



組織を脱退するラカールとチトセには伝えたくなかったのだろう。しかし別れた直後に言うのだからそれだけ切羽詰まっていたということもうかがえる。シャトナとレオが言う通り、カノン様との事だろうか。
五人だけになった空間はどこか物足りなく、ウノ様の話を聞くために座ったソファも広すぎるように思えた。

仲間を殺したというのは重罪で裏切り者行為。実際にラカールとチトセが裏切り者となったわけではないのだから死をもってシングとミルミの責任をとる必要はない。彼らは彼らなりに責任を取ったのだ。組織を脱退するということで。組織の脱退とは暗殺される恐れもあるのに。まあ、ラカールとチトセの二人組にかかればオレたちなんてすぐ撃退されるだろうけどね。
しかし今は気がつかない。ラカールとチトセの組織脱退は今後起こる戦いにオレたちに不利を招くということを。



「みんなすでに感じとっているだろうが、カノンとのことだ。奴が絶好の『理由』を逃すはずもないだろう。それはリャクも各補佐もすでに理解しているだろうな。ちかいうちに集会を開くことになっている。テアも行方不明になったしな」

「ウノ様、テアが、ですか?」

「そうだ、シャトナ。あの子のことだ。ツバサを捜しにいったのだろう」

「生きてるんですか? ツバサはオレの目の前で死んだんですよ。リャク様も目撃してますし。それに跡形もなく消えて、いくら不死でも……」

「不死だからわからないんだよ」

「ウノ様。カノン様とはどうなると予測されていますか?」

「いい質問だナイト! 83点あげよう!」

「……ありがとうございます」

「カノンとは確実に戦うだろうな。だからみんなには準備をしていてもらいたい」

「ええ、わかりました」

「了解です」

「任せてくださいウノ様!」

「俺とシャトナがいれば怖いもの無しですよ」



オレたちの返事を聞くとウノ様は安堵した息を吐くような声を漏らした。しかしそれはいまだ不安げで申し訳なさも込められているように思える。



「今度こそ、奴に肉体を返して貰わねばな……」



ウノ様の小さな呟き声は切ないものだった。





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射撃場で的に風穴を開けてやった。ボロボロと砕け散るまで撃った。
ウノ様が肉体を失っている理由も、ウノ様とカノン様が水面下で対立している理由もオレはすでに思い出している。まだウノ様、ツバサ、リャク様、カノン様の四つの組織が今のように集まる前のことだって。最近は寝る度に記憶を取り戻している。ナナリーの封術が徐々に解けていっているのだろう。ブルネー島で記憶をほとんど取り戻しているが、あれは出来事を思い出しているに近い。詳細は毎日寝ている時に。
さて、今夜は何の夢を見るのだろうか。