帰る場所
「できた」
「早かったな」
ソラは後藤たちがいる世界に無事、到着することができた。 目を覚ましたとき、そこはソラが以前姉と住んでいた部屋だった。ソラは男装をやめ、もってきたこちらの世界での制服を着ると荷物をまとめた。あとは後藤たちに挨拶をするだけだった。
「それにしてもソラが男装してないなんて久しぶりだなあ」
「そうですね。違和感がします」
「オレも。男装に慣れてたからなー」
「いやでも、ある意味では懐かしいな」
「ふーん」
「男装をしていないソラが制服を着ているなんて、だいぶ懐かしい」
「というか今更なんだけど、スカートやだ。ていうかスカートって衣類なの?」
「なにをいいますか。スカートは立派な衣類ですよ」
ソラはシングとミルミと雑談をしている。話している内容は当初の雑談とたいしてかわりはないのに、ソラははじめの頃より気が楽だなと思った。
「で、タイムリミットは?」
「なにそれ」
ルイトがレイカほ方へ向くと、ソラがくいついた。それに簡素な説明をレイカがルイトの質問に答えるついでにいう。
「……えっと、タイムリミットがあるの。私たちがここにいる間、リャク様はずっと陣の前で魔力を流し込まなくちゃいけないんだよ。でもリャク様、仕事や研究で忙しいから……。こ、今回は12時間が限界だって……」
「余裕だな。ソラ、俺たちはここにいるからお前は挨拶をしてこい。あ、でもレイカは採取するんだっけか」
「あっ、採取はすぐ終わるから大丈夫だよ」
「ならいいか。ソラ、念のために武器も持って行けよな」
「わかってるよ」
ルイトがしきると、黙っていたジンが「おい」とソラに話し掛ける。ローファーを履いて行く準備をしていたソラはなにも言わず振り向いた。
「あの、さ……。すぐ帰ってこいよ?お前、いっつも一人でどっか行くから」
「帰ってくるよ」
ソラはジンの目をまっすぐ見ながら、なんとでもないように即答した。表情は相変わらずの無表情だった。それでも瞳だけは発した通り、帰ってくると、強く訴えているような気がしてジンはほっとした。気のせいかもしれない。ジンの思い込みかもしれない。だがジンは、それだけで心の靄が晴れたのだ。
「じゃあ、いってきます」
ソラは背を向け、歩いていった。
「ソラの背中、あんなに小さかったっけ……」
ルイトが自分にしか聞こえないような小さな声で呟いた。
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