It pierces.
 




「町に入った軍隊の輸送トラックを狙う。標的ももちろん乗っているはずだ。トラックのタイヤをライフルで撃て。タイヤがパンクしたとわかったら奴らは換えなくてはいけない。業者に頼んでタイヤを換えている時こそチャンスだ。そのときに殺す」

「わかりました」



小さな田舎町に訪れた響と純は、そこで今回の作戦を確認する。
歩兵部隊を狙った任務だ。しかし寄生者とは仲間を大切に思う者である。隊長を殺せば部隊は混乱する。響と純は部隊の隊長の首を狙っていた。

10階建てのビルの屋上にいる2人はそこから下にある大通りを見下ろす。
そんな2人はLEの腕章を、支給された軍服を着ていなかった。それは、2人がいるこの土地は南半球だからだった。南半球とは寄生者がいる。今回の任務のために2人は寄生者のフリをしていたのだ。普通に過ごしてさえいれば寄生者と人間の区別はつかないのではあるが、バレてしまえば死ぬ。標的のトラックはどうしても南半球を走るため、仕方がないことだった。



「そろそろ来るだろう。準備はいいか?純」

「はい……。いつ、どこから来ても大丈夫、です」



いつも純が抱えている、布で巻かれた棒状の物体の正体はライフル。純は屋上の鉄格子の間から銃口をのぞかせ、大通りを狙っていた。そこを通る民間人が乗った車のタイヤで何度も人さし指を動かしてシュミレーションをする。純はじっと大通りを通る機械を狙撃しようと息を殺し、沈黙を続けた。
やがて道路の先を見つめていた響が緊張を少し混じえた声で呟いた。



「きた」



純は微動だにしない。道路を滑る長いトラックを老い、そして消音器で驚くほど音が抑えられたライフルが発砲した。
タイヤに穴があいたトラックは停止し、中から運転手あらわれる。



「よし。じゃあ純」

「は、はいっ」



てきぱきと射撃のあとを片付け、屋上をあとにしようとした。
純はもう一度道路を見下ろし、あっと声をあげた。



「どうかしたか?」

「教官が……」

「教官?純のか?」

「はい、そうです……。純と漆に戦い方を教えてくれた、教官……です。……教官がどうしてここに……。……あっ」



鉄格子に近づき、純は運転手に話しかける教官へさらに疑問がわいた。
響ははじめ、誰が純の教官だったのかわからなかったが、純が運転手を視界に入れたのがわかり、その目線をたどった。
先ほど純が撃ち抜いたトラックの運転手に話し掛けたのは、黒髪の艶やかな女性。極東の人間がよく着ている服を着崩し、白い肩やおみ足を露出させる女性。
どこかの誰かに似てるな、と思いながらその美しい女性を見ていた。