制圧
 



響の手には槍が握られていた。いつもは大剣をメインにして折り畳み式の槍は軍服の中にあるのに。大剣はどこかに忘れてしまっていた。血で真っ赤に染め上げられた本部のどこかに、人間の腹を複数貫通させた串刺しの状態で放置してあるだろう。
響は槍でわき出る人間達を払い、突きをして次々に殺していった。槍が触れる度にブシャアと赤い噴水ができる。
響の後ろにいる純は響に向かう敵を次々に撃ち抜いていった。何度銃弾を装填したのかもうわからない。

五階まである建物の両端には階段がある。エレベーターは中央にあったが、遊自が特製のチェーンソーで壊してしまった。たしか壊れたエレベーターの破片が桜羅の頭に激突していたな、相変わらず不憫だな、と響は思い出す。中央のエレベーターが使えない今、逃げ道は両端の階段のみだ。その両端の階段から響と純、そして遊自と桜羅が建物の制圧を行っていた。響と純について遊自が洗脳した人間もおり、彼らは各部屋に生き残りがいないか確認をしている。



「四階もそろそろ制圧できそうだな」

「はい。えっと……、五階はシガとロネが先回りしてるんですよね?」

「そうだ。俺たちは早く四階を制圧してあの双子を手伝ってこよう」

「はい!」



数十メートル先には遊自がチェーンソーを振り回して桜羅が薙刀を振るう姿が確認できる。
やがて響と純、遊自と桜羅の双方が中央で鉢合わせした。そこで桜羅がみわから寄生者の力で受け取った報告を響たちにする。



「LEの引き込みには成功したようだが、全員とはいかないらしい。九、十番目と七番目を砦に残して、他全員がこっちへ来たそうだが……。三番目と六番目は結論を保留。響と純に向かって来るらしい。ほかの人たちは仲間だ」

「四人だけですけどねえ。しかし上々でしょう。四人には再度一階から生き残りがいないか確認をしてもらって、後で合流することになりました。響と純の方に一番目と二番目が向かいますよお」

「上司か……」

「では私たちは五階に向かおう。シガとロネがくたばる前にな」



純は三番目、と聞いて窓から外をみた。三番目は漆、六番目は境を指している。純のあとに続いて響も外に視線をむけた。したの方に紫と灰色の軍服がひらりと揺れたような気がした。