三時間後
 


みわの連絡を受けて中将は各対寄生者部隊にある程度階級のある人間を殺すよう指示をだした。各隊長は戸惑いを見せたが中将が論破してしまった。口の上手い中将に反論できる隊長は誰もいない。やがて各々の場所から暗殺完了の報せが届く。中将が指示を出してからすでに三時間が経過していた。それはLEが各々意見を下してから三時間が経ったともいえる。中将は連絡を受けながら口許を隠しもせず歪めていた。



「悪い顔をしていますよ」

「ああ、シガ。いたんですか」

「言われた通り、一階から三階の占拠は完了しましたよ。対寄生者の人間なんていう特殊な方がいないので簡単らしいですね」

「お疲れ様です」



シガとその隣にいるロネの服には帰り血がある。耳を澄ませば上階からたくさんの人の声が聞こえる。



「遊自がいたので楽で仕方がないですね。複数の洗脳を同時にできるので人数が少ないという問題は解消されました」

「軍服を着た響と純もいますからね。動揺を誘うことができます。純がまだ幼いというのも滑車を掛けられるでしょう。上層部は真っ黒です。彼らにはその命に余るほどの罪はありますが、現段階の法律では死が最大の罪の償い方ですからね。しかたがないでしょう」

「……。僕たちは報告に来ただけです。寄生者のためならこの行為には賛成しますが、その先の未来については知りませんよ」

「わかってますよ」

「ロネ……、では皆さんの援護に行きましょう」



シガはロネの背中を押して中将の部屋から出た。廊下には血をだらだらと流した死体がゴロゴロ転がっている。それに見向きもせず二人は階段を目指していった。



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「じゃあ中立になる田中くんと椿くんはここで独利くんを見ていてくれないかな。動かせないし、彼だけを残しておくわけにもいかないから……。寄生者の味方になる私たちは響くんと純ちゃんの手伝いをしにいこう。みわ、案内してくれる?」

「いいよ」

「境ちゃんと漆くんは目的地にて別行動。敵になっても味方になっても、あなたたちの判断を私は受け入れるよ」



そんな会話をしてすでに三時間が経過した。やっとのことで本部に到着して葉蝶、夏満、桃紫、寂、みわは建物の中に入っていった。境と漆はいまだ建物の中に入らず、外で眺めていた。



「漆、お前は純と対面したとき……まともでいられるか?」

「無理だね。いきなり殴るんじゃないかな」

「ははっ。お前が純を殴るなんて想像もできないな」

「僕だって純を殴るなんて初めてだよ」

「でも私も響を殴る。一人でこんなことを抱え込んでたなんて許さねえ」

「うん。それにしても……、いきなり襲撃して殲滅なんてやりすぎじゃない? この作戦のリーダーって誰?」

「一番偉そうなのは中将だけどな。真っ黒だからって、これはないだろ」



真っ赤な窓を視界に入れた境と漆は武器を強く握った。