ピロティ
 


何かの号令を受けたかの様に、境と漆に弓矢を向けていた寄生者たちは砦の奥へ消えていった。すでにピロティまで攻めていた二人は突然取り残されてしまった。



「寄生者の力かな。放送なんて使わなくても彼らはテレパシーみたいなので通じるんだもん」

「……ああ、何かの作戦かもな。警戒を怠るなよ」

「分かってるよ」



境と漆は互いに武器を構えたまま、辺りの気配を探っていた。風の音すら聞こえない。空気はしんと鎮まり、一切気配を感じない。



「ねえ、気配を感じないんだけどさ……」

「変だよな。力ばかりに頼る寄生者は気配を消すのがヘタクソなはずだ。できるやつが居たとしても複数ならリスクは下がるし」

「違う。そうじゃなくて、もしかしたら居ないんじゃないかな?」

「は?」

「居ないんじゃない?」



言われればそうかも、と思って境はため息をついた。
ガチャガチャと聞きなれない音がピロティに響いて境と漆は驚いた。「放送か?」と境がいうと「そうかも」と漆がうなずく。



『えー、こちらLEの十番目椿。先輩方、至急司令室までお集まりください。繰り返します。こちら椿ー。司令室に集まってください。作戦は一旦停止してください』