出入口
 


人気のない石造りの道がスクリーンに映し出された。画面の端には水面がみえる。その場所は砦の出入口にそっくりであった。いや、これは砦の出入口だ。表では境と漆が陽動をしているはずである。それに、この出入口は非常に狭い。
その場所を桃紫が憶測で寂にきいた。



「……裏口?」

「正解。ここは響と純が陽動をしているはずなのに」

「いないってことは……、まさか本当に裏切り者っていうのは」

「ゲホッ、信じられない話だがな。昨日まで仲間だった響と純が」

「仲間だと思っていた、よ」

「……っ」



桃紫はスクリーンを睨み付けた。



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「クリア〜!」



陽気な田中の声が司令室にこだました。足下に転がった頭をサッカーボールのように器用に遊んだ。血だらけで鉄臭い部屋で笑い声をあげる田中に椿はため息を漏らした。
椿は司令室の中を見渡して放送用のマイクを探したした。すでに電源は入っている。システム管理室が桃紫と寂がいる証でもある。あとはスイッチを押して砦内に放送をかければいい。この砦はLEが占拠したのだと。そして奪還したのだと仲間に報せればいい。



「ちょっと待ったー、待って、待った待った!」

「おっと敵発見! 報告書の特徴と瓜二つ! 寄生者だね、死ね!」

「待って待って! マスクのお兄さん! 僕丸腰なの! 話を聞くだけでいいから!」



司令室の出入口に突然現れたのは、みわ。田中と椿は初対面の寄生者だ。