残党退治
 


血が大鎌の刃にベットリと付いているが、そんなことはどうでも良かった。大鎌を振る度にその血が丸い滴となって舞おうとも、知ったことではない。
一騎当千の名に相応しく、私は寄生者集団――盗賊の身体を両断していった。血を噴水のように噴き出して面白いくらいに簡単に死んでいく奴らにくれていく感情はない。一応は私も軍人だ。敵の死にいちいち抱いてやる感情なんて要らない。これを楽しく思ったりするのは殺人鬼になれるだろう。誉めてないけどな。



「はっ。お前がラストだ!」

「ひ……!」

「これで仕事は終わり!私はホテルに帰って寝るッ!」



峰を引きずればコンクリートの地面と擦れて金属らしい悲鳴があがる。攻撃範囲に入ると大鎌を浮かせて横に薙ぎった。盗賊は持っていた自分の武器で防御の型に構えたが、勢いがついたのに今さら引くなんて私はしない。自分でもわかっているのだが、私はわりと好戦的だと思う。それに攻撃ばかりする。強襲派だ。
相手の武器を飛ばして身体を一刀両断。ブシャアッと溢れだした血を確認する前に私は別のモノを確認する。



「お、おい!漆!!」

「?呼んだ?さか……ッ!?」



リーダーと電話をしていた漆の上空に武器が飛んでいたのだ。その武器は真っ直ぐ漆の頭を目掛けて落ちる。



『っ?え?え?どうしたの?』



漆が放り投げた電話越しにリーダーの困惑した声がした。その電話は弧を描いて私の足元に落下した。
漆は鞘に入ったままの刀を手にして立ち上がるとその柄を握る。そして、落下してきた武器を弾いた。その弾いた武器は私の元へ飛んでいく。とっさに私は回避した。



「あっぶないだろ!漆!」

「ごめん境!わざとじゃないんだよっ」

「わ、ざ、と、だろ!!」

「わざとじゃないったらー……」

「じゃあなんで避けなかったんだよ!なんで受け止めた!?なんで弾いた!?」

「ッチ」



コンテナの上から私を睨み、帽子を深く被り直す漆の動きが明らかに私の質問に対する答えだろう。まあ予想はしてたけどな!なぜか悲しいぞ!私!



『え、え?どうしたの?漆くん大丈夫?』



音もなくコンテナから飛び降りた漆は放り投げた携帯電話のもとへたどり着くと、それを耳にあてた。



「リーダー、ごめんね。なんでもないよ!それより次の任務は」



もし避けなかったら怪我してたな……。想像しただけで恐ろしい。
私は地面に転がった武器を見ながらほっとため息をついた。