作戦会議
 


「全員が揃うのは久しぶりだねー」



葉蝶の目がぐるりとLE作戦本部室を見渡す。葉蝶の隣で夏満は資料を全員分配り、境と響のあいだに漆と純が座り、咳をする寂の背中を後ろから桃紫がさすり、独利は壁にもたれて静かにしており、田中は背筋を伸ばして座り、椿は手元のコーヒーを飲んでいた。
色が死んでからLEが全員顔を合わせるのは久々だった。



「げほ、ごほっ。あのうるさい色がいないと少し寂しいな」

「色先輩は女性隊員を口説きますからね」

「ん? 私口説かれたことないぞ」

「境先輩、女性だったんですか?」

「センパイ、どんまいっ!」

「私は女だって何度言わせるんだ椿! 田中もフォローするんならフォローしろよ! いい加減だな」

「落ち着け境。かわいい純が怯えてるだろ」

「黙れロリコン!」



沸点の低い境に一切の反応をしないで無視を決め込んでいる漆はため息をついた。桃紫は手を頬に添えて「あらあらぁ」と微笑ましくその光景を見ており、独利はうるさい、と口を動かした。純は漆の左手を握って怯えている。



「お前ら黙れ」

「でも夏満、私に喧嘩を売ったのはあいつだ。私は椿の喧嘩を買う」

「喧嘩の売買……」

「ついでに独利も買っておく。礼儀だろ。訓練所に出ろ、二人まとめて相手してやる」

「境、まずは座れ」

「おい夏満」

「今回は次の作戦の説明をするために集まってもらった」

「おい」

「手元の資料をみればわかると思うが、今回の舞台は戦場大陸の北部南地域だ」

「っち」



境は完全に無視されて舌打ちを残したままソファに座り直した。漆に資料を手渡され、それをみる。

戦場大陸とは、世界の丁度中央に位置するひとつの大陸だ。その大陸で人間と寄生者が戦争をしている。この戦場大陸以外で戦争をすることは硬く禁じられている。両側共に戦争をした者には厳しい罰則が与えられることになっている。唯一戦争を許されたその大陸の先住民はほとんどが死に、地獄のような有り様である。大陸の南北の端にそれぞれ軍の拠点があり、それを制圧した側が戦争に勝ったことになる。
まるでゲームのような戦争だ。



「南地域の第六砦が寄生者に制圧されたの。この作戦は私たちがその砦を奪還をするんだよ。この砦は北部への入り口で、戦場大陸でも要である砦。私たちは絶対に奪還しなくちゃいけないの」



夏満に成り代わって葉蝶が説明をした。夏満はホワイトボードにペンで作戦を分かりやすく図で表している。
「あれって境先輩のためですよね」「そうねぇ。漆や純なら口頭でも解るし、境のためかしら……」と椿と桃紫が話していたが境に睨まれて口を閉じたが、響も目で彼らの会話に参加した。互いに頷き合う様子を境は悔しそうに睨んだ。