寄生者ふたり
 


余裕のこもった表情で桃紫は両手にそれぞれもつ短刀をくるくると回して遊んでいた。緊張が高まり、息を殺して前を進む響と純の二人とはまるで正反対の態度である。




「奥から二つ目の部屋よ」

「奥から二つ目の部屋だな。了解」



響が確認をとり、純が静かに頷く。
ドアの近くに配置した三人は中から二人の喋り声が聞こえるのを確認し、中にいると確信する。

いっきにドアを開けた。素早く中に入り、武器を構える。純の銃口は二人のうち一人に向いていた。



「うわぁっ!?」

「え、なになに!?」



唐突で、中にいた二人の少女は驚いた。
薄い金髪をツインテールやや後方に結う少女と、右目を髪で隠している少女。「あらぁ?」と桃紫はツインテール少女を見た。雄叫びをあげて死んだテロリストから助けた少女だ。



「眼鏡のお姉さん、さっきは助けてくれてありがとね」

「寄生者だったのね。助けなければ良かったわぁ」

「僕は感謝してるよ。かっこよかった、眼鏡のお姉さん」

「あらあら、照れるわ。人の命を助けるのもいいわねぇ。でも残念。私の本業は人の命を奪うことなのよ。本当に残念だわぁ」

「ええーっ!?」



驚いてみせるツインテール少女の隣で右目を隠した少女は「みわ」と彼女の名を呼んだ。ツインテール少女――みわは悲しそうな顔をして「桜羅、世の中って厳しいね」と言いながら振り返った。右目を隠した少女――桜羅は淡々と言う。



「なんでのんびりできるんだ、みわ。彼らはLEだぞ」

「げぇっ!? 対寄生者部隊なのはわかってたけど、LE!? 攻撃に特化した部隊じゃん!」

「早く帰らないと遊自に怒られちゃうよ〜」



目に涙を浮かべ、水位が上昇するみわに純が容赦なく銃口を向けた。そして引き金に指をかけたとき、ライフルにナイフが刺さった。刺さっていた。みわが素早く投げた一本のナイフがライフルを壊してしまった。純は驚いた。膝をついた状態から立ち上がり、ライフルを廊下に滑らせて捨てると軍服の下に忍ばせていた拳銃を一丁取り出して構える。純の前には響が盾になるように立ちはだかっていた。

戦闘が始まった。
みわの投擲は数メートルであれば非常に正確であった。その距離を保つみわに響の大剣が届かない。みわのナイフを大剣で弾く程度だ。

桃紫はその様子を見てふと疑問を抱いた。桃紫にはまだ攻撃が仕掛けられていない。警戒心が高まるのと同時に観察力も高まる桃紫には、ふと疑問が生まれた。



(あら? 響に純、それにあのみわって子……もしかして手を抜いていないかしら。みわはまるでわざと響ではなく大剣を狙っている様に見えるし、純はわざと外しているようにも見える……)