侵入作戦
窓が割れて、響は人質が捕らわれている従業員用の休憩室に入ることに成功した。驚いたテロリスト五人のうち三人が響に発砲したが、すぐにリーダーらしき人物が一人の少女の頭に銃口を向けた。
「コイツがどうなってもいいのか!? ああ!?」
「……」
響は動きを止めた。が、すでにこのとき、純は侵入していたのだ。同じLEに所属する仲間を解放。響が入ってテロリストと応戦したのはほんの一分にも満たないが、純は上手く隠れ、味方の解放に成功したのだった。
「彼女の頭からその危険なモノを離さないと、どうなるかわからないわよ? あなたの小さな脳みそが入った頭が」
「……ッ!?」
捕まったツインテールの少女が嗚咽している。少女に銃口を向けているテロリストは冷や汗が流れた。先ほどまで人質として捕まえていた女性が、拳銃をもって自分に銃口を向けているのだ。テロリストはそこであらためて休憩室を見た。窓の近くには先ほど侵入した響、人質の近くには純。ドアには出入り口を塞ぐように、中将が立っていた。そして人質だった女性――桃紫がいる。仲間のテロリストは一人がすでに床に伏せられていた。桃紫はそのテロリストから拳銃を奪った。
「あらら。離しなさいって意味が通じないのかしら。残念ね」
桃紫は銃口を下に向け、少女を捕まえていたテロリストの足を撃ち抜く。それを見て他のテロリストは抵抗を止めた。 軍服を着ている人間とその仲間らしき人に、ただ武器を手にいれただけのようなテロリストがかなうはずがないのだ。出入り口を塞ぐ軍人にいたっては、その軍服に幾つものバッチや星のマークがついている。意味は解らなくても地位の高さだけは少なくとも理解できる。
しかし。
この休憩室のなかには、人質の中には、寄生者がいるのだ。人間を嫌い、仲間を愛する寄生者が。
「ウワアアァァァ ア 娃 ァぁ あ ああ ァァア 唖 亜 阿 蛙 亞 會ァ」
桃紫に足を撃ち抜かれたテロリストは、男は、雄叫びをあげながら狂ったように立ち上がった。一般人の人質たちは怯え、恐怖にその身を染めている。おなじテロリストも次々に狂い叫び、この狭い休憩室に断末魔が響いた。
「純、寂、人質をこの部屋から逃がしましょう。これは寄生者による洗脳の初期段階です。早く!」
「は、はいっ」
「やはり僕も駆り出されるのですか。……げほ、ごほっ」
ライフルの先端につけられた刃の部分を使って純は急いで人質を解放し、寂は咳き込みながら人質を部屋の外へ逃がす。その間、中将は響と桃紫に指示を出した。
「響と桃紫はテロリストを殺してください。寄生者の傀儡となった以上、殺すしかありません」
「了解」
「了解」
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