テロリスト
 



監視室には警備員とテロリストがいた。警備員三人に対してテロリストは二人。その二人は響と純の奇襲で見事に沈黙させられた。警備員は響たちがLEだとわかるとすぐに指示に従った。
見学の名のもと、中将は口を出さずに拳銃を握ったまま響と純についていくだけだった。



「人質はどこにいるんだ?」

「従業員用の休憩室に集められています。いま表示しますね」

「ああ、頼む」



警備員が大きな画面に従業員用の休憩室を表示させた。表示されたそこには15人の人質とテロリストが五人。人質の中には確かにLEの仲間である桃紫と寂が映り込んでいた。二人とも私服で、暇そうにしている。



「ひ、響……」



純は控え目に響の軍服の隅を掴んだ。画面にはLEだけではなく、二人のよく知る寄生者もいたのだ。



「どうしました?」

「いや、なんでもない。純、これが敵の大将っぽいな」



中将にそのことは気付かれまいと響は誤魔化して首を振った。縛られて身動きができず唸るテロリストに純は怯えた。中将は「仕事の邪魔をしないでいただきたい」と言って彼らの頭に拳銃を振り下ろした。昔、漆が教官によく銃で殴られていたな、と思いながら純は彼らを見ていた。血が出るまで頭を殴りながら叱る上司は軍にいくらでもいる。その中で中将は非常に優しい部類である。テロリストの唸り声には怯えていたのに、殴られる様を見て純は苦笑をしていた。



「純、今回は一人ずつ行動して従業員用の休憩室に行こう」

「は、はい!」

「従業員用の休憩室への入り口は二つある。まあ、片方は窓だけどな。窓からの侵入は俺がやるとしよう。ついでに陽動役も。純はこっそりドアから入って最優先に桃紫と寂を」

「……みわと桜羅は……?」

「あの二人なら大丈夫だ。それにまだ中将以外に知られるわけにはいかない。まずはLEだ」

「はい!」



力強く頷いて純はライフルの紐を肩からさげた。警備員から休憩室までの行き方や距離を聞いて、二人は作戦を寝る。すでにテロリストを黙らせた中将は壁に寄りかかりながら静かに彼らの話を聞いていた。



「で、中将はどうする? ここから見てるか?」



一通り作戦会議をしたあと、響は大剣を携えて中将に聞く。見学としてやって来ているため、今回は参戦しないはずだ。みるだけならば、この監視室にいればいい。しかし中将の考えていることはわからない。



「そうですねー。純についていきます」