双子の寄生者
 

アハハ、と笑う田中を無視して椿は境たちに何があったのかを話した。椿のハルバートが折られたその経緯と、相手にした寄生者の情報。



「まずは敵のことを。田中先輩が言ったように、相手は双子です。しかし俺たちが戦ったのは双子の少女の方。年齢は15歳くらいの隻眼の少女です。少年のほうは目の色が違うだけで少女と瓜二つでしたが戦ってはいません」

「どうして少年は戦わないんだ?」

「さあ?」

「そうか……。続きを頼む」

「はい。彼女は薙刀を使っていました。あのときは、俺たちを殺すつもりは無さそうでしたね……。追い払う様でした。その手段のひとつとして、俺の手から武器をとったあと……」

「折ったのか?」

「そうなりますね」

「葉蝶さんみたいな馬鹿力だな……」

「ああ、いえ、あれは建物の小さな隙間にハルバートの刃の部分を押し込んでテコの力で折ったようなものです。境なら片手でできるんじゃないですか?」



椿は嘲り笑うように言い、彼の意見に独利は頷いて同意を示した。「よぉーし、歯ぁ食い縛れよ後輩くん」と、境は指を鳴らしながら椿に一歩一歩近づく。椿は「冗談だって」と境に比例して離れていく。



「そんなんだから男っぽいっていわれるんでしょ」



斜め下から漆の呆れた声がしたのは境が生意気な後輩の腹を殴ってからだ。










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翌朝になり、境たちは一晩ホテルで休んだあと外へ出た。もともと寄生者の討伐が任されていた田中と椿は、境たちを連れて双子の寄生者がいるという場所までやって来た。ホテルから案外近く、境、漆、独利にとって予想外な場所。



「……が、学校!?」

「一般の人間が通う学校だな。みたところ、小中高が一貫したマンモス校だな」



校門の前に5人が佇む。校内からチャイムが響き、遠くでしたたくさんの話し声が次第に収まっていった。静かになる中で、漆は「本当にここなの?」と疑いつつも聞いてみる。



「寄生者の双子は中等部の保健室を占拠しているみたいだヨ」

「保健室? ……それなら一般の生徒は困らないの?」

「何か理由をつけて今は使えないって言ってるみたいだネ。中学生は高等部か初等部の保健室を使ってるらしいよ〜」

「へえ、そうなんだ……」



帽子を深く被り直した漆は、そのせいで顔が見えない。その意味をよく解っている境は漆の頭を下手くそに撫でた。