後輩二人
 



バスが停車し、境たちはが下車する。バス停にはすでに同じLEである田中と椿が待っていた。
境たちの姿を確認すると真っ先に田中は駆け付けて、顔の半分を覆ったマスク越しにもわかるように満面の笑みを浮かべた。



「こんばんは、皆さん!! 荷物を持ってあげようっ!」



両手を広げ、さあ渡せと言わんばかりにトーンの高い声で言う。独利はため息をついた。田中の行動など自分には関係ない、とでもいうように椿はそっぽを向いていたが、境がハルバードの入ったケースを持っていることがわかると、田中を押し退けて近付いてきた。



「お疲れ様です。先輩、ハルバードをください」



ください、と言いながら境の後ろにまわってハルバードのケースをせっせと自分の手に渡す椿に境は「相変わらずだな……」と拒むことなくハルバードを渡した。



「さて、取り合えず滞在しているホテルまでいきましょうか」

「ああ、そうだね。漆はとくにバスに乗ってて疲れたでしょっ」

「僕は疲れてないよ。独利の方が疲れてそう」

「独利ーっ! 荷物を持ってあげようか!」

「うざい」



くるくると回りながらハイテンションで独利の前に現れる田中を独利は一言で片付ける。



「つーかお前ら、私の荷物を持つっていう心がけはないのかよ。女を優先してくれよ。気遣いが足りないな」

「先輩、女性なんていました?」

「エ? どこどこ?」

「死にたいのか……っ!!」

「それにしても男ばかりだとむさ苦しいですね」

「そうだねー。あ、でも漆はむさ苦しくないよねっ。まだ小さいし唯一の癒しかなっ」



漆は田中に抱き上げられた。丁度境と漆が向き合うようになる。境は漆の真っ黒な顔を見て、自分が女だと主張すべきタイミングを見逃した。



「助けろよ、境」



口パクで漆に言われ、睨まれる境。境はなんとか田中に自然と言い回して漆をおろしてもらうと、漆は境の後ろへ隠れた。



「はやく行きましょうよ」



いつの間にか数メートル先に行った椿と独利。いつの間に、と思いながら境、漆、田中の三人は彼らを追い掛けた。その道中はくだらない雑談から一変して、相手の寄生者についての情報や、どういった経緯で椿のハルバードが折られたのかを話す。
田中と、少し面倒くさそうに話す椿の言い分で、何となく後から来た三人の中で相手の寄生者についてイメージ像が出来上がった。



「オレたちが相手にした寄生者は双子の兄妹みたいだったな。珍しいことに境と響とおんなじ異性の双子! 二組も異性の双子をみるとそれが珍しいのか曖昧になるねー。あはははっ。むしろ同性の双子が見たことないよー!」

「先輩は話が逸れるので黙ってください」