仕事
 


「わ、独利! 久しぶりー!」

「大人しく座っていろ」



作戦本部室で独利に向かって笑顔を浮かべながら漆は手を振った。いきなり独利のそっけない態度を受けて漆は子供らしく拗ねた顔をした。



「……斬ってやる」



そんな物騒な一人言は隣にいる境にしか聞こえない。境は何とも言えない気分になりながら漆の肩に手を置いて「危ないだろ……」と少年を宥めた。



「えー、休みのところ悪いですが、皆さんにお仕事でーす」

「質問」

「はい、独利くん!」

「俺にはペアがいない」

「その質問ね。大丈夫。今回、独利くんは境ちゃんと漆くんペアと同じ仕事だから」

「……は?」

「え!? ちょ、葉蝶さん!?」

「僕、境だけでもう疲れてるのに独利まで追加されるの〜?」

「おいガキ。どういう意味だコラ」



境と漆の反対側、ちょうど向かい合う方に座る響と純。葉蝶その二人の方を向いて手元にある書類を見ながら言った。



「あなたたちには中将がついていくからね。見学したいんだって」

「し、中将が……?」

「了解した」



葉蝶は純の頭を撫でて、手元にあるホッチキスで留めた書類を境と響のまえに出した。
これが今回の仕事の内容。それを一緒にパラパラと捲っていた漆と独利は顔を歪めた。



「ねえ葉蝶、今回の仕事って田中と椿を迎えにいくことなの?」

「……こっちは桃紫と寂だぞ」



眉に唾をつけるような話だ。なぜ迎えに行かなければならないのか。



「なんだよ、帰りの運賃でも足りないのか?」

「そうじゃないの。まずは桃紫ちゃんと寂くんの話ね。二人は人質にされて動けない状態みたいなの。人質といっても、相手は同じ人間で身代金を要求している。寄生者じゃないけど気を付けてね。このご時世、楽な暮らしができないからね……」

「東のほうか。わかった。痛め付けるのはどこまでだ?」

「響くんの判断に任せるよ。でもあまり手荒なことはしないでね」

「了解」



響は書類を読み、純も覗き込みながら「中将も……」と呟いていた。



「境ちゃんたちは寄生者の討伐。いつも通りだね」

「でもよ、三人も必要な理由があるんだろ?」

「境ちゃん、お目が高い!」

「使い方ちがうよ」

「実は、その寄生者が強いって話なの。椿くんのハルバートが折られたらしいよ」

「手応えがありそうな奴だなっ!」

「境ちゃんが喜ぶと思った! ついでに椿くんに新しいハルバートを持っていってあげてね」