異変
 


昼御飯を食べ終わり、境と響は約束通り独利の手伝いをすることになった。
三人が色の部屋に入り、まずは段ボールに皿や服などを詰める作業に入った。女性が好きで、モテて、プライベートでは常に女性が周囲にいたような男だった。身に付けるものに気を使っていて、境と響が服を総合しても色の数には敵わないということが今日わかる。段ボールに詰められていく色のもの。



「境、響。やっぱり手分けをしよう。境は皿で響は小物な」

「主導権はお前かよ」



境は口を尖らせて文句を言っていたが独利の指示に従っている。

陽が傾き、オレンジ色の光が窓から部屋を照らしはじめた頃、やっと色の部屋の掃除が終わった。軍の駒の死は珍しくもないのだが、LEのメンバーの死亡は非常に珍しかった。それでも養成機関にいたときから仲間の死は目の当たりにしていて悲しいというような感情が込み上げることはなかったのだが、境は怒りが込み上げていた。寄生者に対して、どうしても仲間を殺された怒りがおさまらないのだ。
境と響、独利は色の部屋を出ると、解散することになった。独利は会釈をするだけの挨拶をして去り、境は「ノリが悪いな」とふてくされていた。



「なあ、外で手合わせしないか?」

「今日はしない。どうせだから自分の部屋を掃除したいしな」

「響、そんなんじゃあ人生つまらないだろ」

「さあ。案外たのしいかもしれないぞ」

「つまらない趣味だな」



境が文句を言う。そんな彼女を置いて響が自分の部屋に帰ろうとすると、突如、葉蝶が境と響の名前を叫びながら走ってきた。二人は自然とそちらを向く。



「どうしたんだよリーダーさん。男子寮なんか駆けて」

「リーダーじゃなくて葉蝶って呼んでよ、私のこと! あ、響くんもね。年下から名前呼びされるのってすごくいいと思うの!」

「葉蝶さん、まさかわざわざそれを言うために来たのか?」

「そんなわけないでしょ! それより作戦本部室に集合だよ。私はちょっと放送室を借りてくるから!」

「あ、ああ……。いってらっしゃい」



颯爽と走り去っていった葉蝶を見送りながら、対応していた境は首を傾げる。



「なんか、急いでるみたいだったな。何かあったんだろうか」



境が首を傾げた理由を、響が言う。
二人はいったん軍服に着替えてから作戦本部室へそのまま直行することになって別れた。