問題点
 


LEの作戦本部室。大きな軍本部の中にあるその一室で葉蝶と夏満は柔らかいソファに向き合って座っていた。



「まだ四、八、九、十番目が帰ってきてないな」

「うん、そう。二週間後に大きな作戦があるから早く帰ってきてって下二人には伝えてあるんだけど……。それに四、八番目の二人は難しい仕事じゃないはずなのに遅いよね」

「三番目と六番目を出勤させるか?」

「んー。休みのところ悪いけど私と夏満は会議があるし、頼むしかないかな……」



ミルクティーを口に流し、葉蝶は夏満の意見に同意した。次の作戦について詳細が書かれた資料を手元に置く。その作戦が何を、いかに左右するか……。まだ軍としての立ち位置が周りに認知されにくい対寄生者部隊では、予測がつかなかった。










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「なんだと?」

「落ち着け、境。お前の気持ちはよくわかる。かわいい純があの……あの、おっさんに連れていかれたんだ。込み上げるこの殺意を抑えるのは難しいだろう」

「ちょっと待てよ、響。いくつか訂正させろ。まずおっさんに連れていかれたのは純だけじゃなくて漆もだ。それに『連れていかれた』んじゃないな。食事に誘われただけだ。つか、おっさんじゃないか。中将だな」



境の部屋に割り当てられた数少ない女子寮の一室に響が訪れていた。時刻はまもなく正午。
休日になった二人は軍服を脱ぎ、私服で身を覆っていた。

現在、双子の二人が抱えている問題はひとつだ。それは今日の昼食をどうするか。この双子のうち、料理ができるのは境だけだ。境は料理をしようとしたのだが、なんと、部屋に備え付けてある小さな冷蔵庫の中は空っぽだったのだ。胃を満たすために境の部屋へ訪れた響が見た光景は、冷蔵庫の前で絶望する境の姿だ。

純と響は、いくつもの対寄生者部隊のトップに立つ中将――これは彼の地位であり、名前ではない。別名は師団長――と共に街へ出掛けていったのだった。中将は「おっさん」と呼ぶにはまだまだ若い。それは軍の上層部にいれば目立つくらい若い男性のことだ。本部にいるLEに話し掛ける回数は比較的に高い。ちなみに対寄生者部隊をつくろう、と提案したのが彼だ。



「なあ、いま帰還してるLEって誰だ?」

「ああ? ……んーっと、報告書を今朝提出するときにみた名簿によれば、桃紫と寂のペア、田中と椿のペアがまだ任務中だったはずだぜ」

「境、つまりは独利とリーダーと副リーダーがいる。ってことはこの三人のうち誰かの部屋に訪問すればいいんだ」

「ここから近いのは独利だよな、響?」

「そうだ」



いつの間にかヒソヒソと内緒話をしているような声になりながら境と響は立ち上がった。