Strategy headquarters
 


対寄生者部隊はつい最近できたばかりの部隊だ。若い人間でも、戦闘能力に特化した者のみで構成されている。
まだ対寄生者部隊の人数は少ない。戦闘能力があっても軍ではまだまだ青二才扱い。LEに許された部屋は軍本部の隅っこにぽつんとある部屋だった。



「たっだいまー!」



その部屋に上機嫌で漆が入り、続いて機嫌がいい境も「今帰ったぞー!」と声を弾ませて入った。

彩が洗脳をされていたという衝撃的な任務を達成してから数日。響たち四人はLEの作戦本部室へ戻ってきた。



「おかえりー! お疲れさま! 報告書はいいか今日は休んでいいよ!」

「いや、報告書は今日のうちに……」



作戦本部室の重たい扉を開けば、中でティータイムをしていた。童顔な女性――LEのリーダー・葉蝶は頭の髪飾りを直して笑顔を四人へ向けた。
響は報告書を書く、といいはじめると境はあらかさまに嫌そうな顔をした。



「それって私も強制参加だよな……」

「当たり前だろ。お前が言っていた遊自って奴について報告が必要だ。そもそも任務を達成したのはお前だろ」

「報告書ってあれだろ? 紙に書くやつだろ? あれの何が楽しいんだよ」

「いつもはどうしてるんだよ。というかお前、港来る前の報告書も書かないといけないだろ」

「ああああ!! おじさんの任務! 忘れてた! つーかお姉さまに『お前』はないだろ弟」

「生まれた時間差なんて無いような『双子』の『お姉さま』に言われたくないな」

「ほぉ、喧嘩なら買うぞ?」

「そんなもの売ってないが?」



「まあまあ」と双子の境と響の姉弟喧嘩を止めようと葉蝶は二人の間に入ろうとしたが、漆が無駄だと説明。漆と手を繋いだ純は葉蝶と同じように二人を心配していた。



「漆、ちなみに報告書はいつもどうしてるんですか?」

「書くのは境で、内容の担当は僕。てかおじさんの報告書はもう僕が書いたんだけど」

「な、なるほど……です」

「本当に困っちゃうよねー」



あはは、と面白いという表情は無い漆の乾いた笑い声。



「でも作戦本部で喧嘩されると困るな……。響くんは冷静だからいいんだけど、境ちゃんが……」

「静かにしないか!!」



姉弟喧嘩がヒートアップしていく最中、部屋の奥で書類整理をしていた男が怒鳴った。



「嫌でも報告書は書け境! 提出期限は明日のうちにだ。今日書かなくてもよい! ちなみに貴様らの明日からの予定はなし。自由にして構わん。各自行動に移せ!」

「はい……」

「了解です」



奥で仕事をしているのは葉蝶とペアを組んでいる副リーダー、夏満だ。
夏満に圧倒されて境と響は黙るものの、響の「ざまあみろ」という目に境は苛々せざるおえなかった。