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「あー。暇だ」

「うるさい」



境は太陽が西へ傾き始めるまだ青い空を眺めながら小さく呟いた。だが、すぐ横にいる響がピシャリと注意をしてしまい、境は舌打ちをする。

ここは港全体が眺められる少し離れた崖。内側にU字を描くように作られている港をその崖から見ることができた。港はとても小さいが、大型船が来るわけでない田舎の給油地。境、漆と再会を果たしたあと船を待つために響たち四人は張り込みをしていたのだった。
「暇だ」と境はいうが、もう何時間も変化がない港と海を見ていて、ライフルのスコープで観察を続ける純も、刀袋から武器を出した漆も暇そうだった。

境はとうとう待つことに飽きて大鎌を綺麗に掃除しはじめた。



「純、船は見えたか?」

「は、はい。たまに船が見えるんですけど、こっちに来る船じゃないみたいで……」

「そうか。……夕暮れまでには来ると思うんだがな……」

「おい、夕暮れまで何時間あると思ってるんだよ! はやく来いよ船ー。あー、もう。5分待っても来ないなら私は港まで走って堂々と待ってやる」



待つことがなかなかできない境は頭をかきながら、立ち上がり、大鎌を振って調子を確かめていた。
そんな境に漆は笑顔で言う。



「僕は大人しく待ってるから行くなら境が一人で行ってね」

「おい、漆は私のペアだろ!? ここで裏切るっていうのかよ。これじゃあ私がリーダーさんに怒られるだろうが」

「だって港に大鎌持ってる危ない人がいたら寄生者だって近づかないよ」

「んだと!? よーし、いつも通り、組み手で決着をつけようじゃないか」

「このままだと暇で体がなまっちゃいそう。いいよ、その話のった!」



やる気に満ちて、漆の顔がぱっと明るくなった。不安そうにしている純の頭を響が撫でる。
怪我をしないようにと、武器は置いて境と漆が向き合ったときだった。純が「あ」と小さく呟いた。



「船、あります。こっちにむかっています」

「あ?」

「え?」



境と漆が今すぐにでも動き出しそうな時、純がスコープの先を覗いたまま呟いた。境は腕捲りをしたまま、漆は上着を脱いで。騒いでいた境も静まり、さざ波の音をBGMにして響は組み手をしようとしていた2人に「そろそろ港に行くぞ」と呼び掛ける。
立ち上がる響と純。境と漆は元の格好に戻ってそれぞれ武器を再び手に取った。すると境は我先にと言わんばかりに3人の前を歩いていく。純は追い掛けようとしたが、境をよく知る響と漆は目的地は同じだから追い掛けなくてもいいと、ため息をついた。