張り込み作戦
 



弟の響だ。双子の弟。
純とペアを組む、私と容姿がそっくりな。鏡のように反対の姿をした響は薄っぺらい笑みを浮かべて私の前に立つと改めて「久しぶり」と言う。



「ありがとな、町長さんに話してくれて」

「境がするより俺がしたほうがいいだろ」

「馬鹿にしてんのか。話くらい普通に聞けるし話せるぞ。ただ戦うのが好きなだけだ」

「見境なく戦うくせに」

「うるせえ」

「純を一人にするのが心配だったけど大丈夫そうだな。もし知らないどっかのおじさんが俺の大事な大事な可愛い純に話しかけたらと思うと……!!」

「黙れロリコン」



最後に本部で別れたときから変わってないな。嬉しい反面、ガッカリする。こんな何を考えてるのかわからない変態といて純は大丈夫なのか。響に限って手をだしたりしないだろう。そこらへんはわきまえてるはずだ。……でも心配なものは心配だな。どうせホテルは一緒だろうし風呂に入ってるときにでも純に話を聞こう。



「げ、響……」



純と雑談をしていた漆は響の登場に気がつくと嫌そうに顔を歪めた。純はぱっと笑顔を浮かべたのに対して漆の顔はまるで正反対。見ていて面白いのだが八つ当たりにはなりたくないな。いつも八つ当たりを私にしてくるし。



「響! 話は終わったのですか?」

「ああ。寄生者は港に現れるらしい。いつ現れるかなんてわからないから……」

「お、おい! まさか張り込みか!? このまえ私と漆がやったばかりだぞ!?」



張り込みって暇だろ! 前回は寄生者が出ている時間帯を予測できたが今回は予測できていないようだ。響の顔を見れば言われなくてもわかる。何時間も張り込みって、ふざけんな。飽きるわ。
ということを響に伝えようとした。



「境」



そのまえに響が有無を言わせないような目で私をみる。さらに漆から冷ややかな目。
あいつ、ほんと可愛くねえな。



「漆、お前張り込みは嫌じゃないってのか?」

「嫌とかそういう問題じゃないんじゃない? 張り込みは仕事でよくあるし、そうしないと仕事にならないんだから」

「ガキなのに可愛くね……、っなんでもない。漆のいうとおりだよな、うん」



睨むなよ……。
響と純がちょうど漆の黒い顔を見ていなかったからいいものを。純がみたら絶対に涙目になるぞ。



「境も納得したことですし、港に行きましょう!」