Unification
 



「依頼通り、港に現れる寄生者を全滅させればいいんですね」

「はい。ここは輸送船が使う給油地。寄生者が船の荷物を狙っていて困ってるんです。我々一般人では寄生者には敵いませんし」

「私たちにお任せください。……次に船が来るのはいつ頃になりますか? 寄生者に合わせて動こうと思いますので」

「今日、一隻くる予定です。船は一泊してすぐ港を出ていきます。今日を逃すと次は二週間後ですね。あなたたちLEは来週にいらしてくださるとばかり思っていたので急になりますが……」

「構いませんよ」

「それではよろしくお願いいたします」

「ご期待にそえて見せましょう」



響は頭を下げ、壁に立て掛けておいた大剣を軽々と持ち上げて部屋を出ていった。響と話をしていた町長は「なんて頼もしい……」と響の余裕のある言葉に信用を寄せていた。

町長宅の玄関を開けて、響は表情を変えず、外の光景を視界にいれて驚いた。
響が可愛がっている純と手を繋ぐ小さな少年、そして自分とそっくりな容姿をもつ少女。
少女は境。響の双子の姉だ。いつも冷静でいる響とは逆に感情表現が豊かで好戦的。やたらと体を動かしたがる活発な少女だ。好戦的であれば戦闘経験も人一倍あり、後先どころか左右も前後もよく見ないで突進するが戦闘時において境は頼りになる。パートナーの失敗も平然とフォローをし、戦闘面だけはLEのなかでも頼りになる。
純と仲良くしている少年は漆。幼少期を純と共に過ごしたまだ10歳の少年だ。対寄生者部隊で彼は最年少で入隊している。あまり頭を使って行動しない境とは逆に頭のかいてんが良く、腹黒いため何を考えた上で行動を起こしているのかわからない。ただ、純のことを己より大切に思っている。それは純も同じで一心同体のようなものだ。
その二人をペアにしないのは単に、まだ幼い二人だけに依頼を任せるのは少々荷が重かったり、依頼者からの信用を欠いてしまうと思ったのだろう。



「境」



響がそう短く姉に呼び掛ければ、呼ばれた本人は振り向く。「あ?」という口の悪い返事のあと、境はニヤッと笑った。相変わらず境の笑みはどこか野生的だなと思っているが、姉にそのことを言えば「お転婆ちゃんと言え」と殴られることは目に見えている。



「よお、響。元気そうだな」



返事のあとに続いた声は嬉しそうな音色だった。