合流
 



「な……、どうして純がいるんだ!?」

「純!」



私が立ち止まっている間に漆は純の所へ駆けていった。私はそれを止める暇も余裕もなく、「どうして響と別行動をしている純がここにいるんだろう」という疑問を頭に浮かべながらただ漆の後ろをついて歩いた。



「漆! それに境も!」



私たちの姿を視界に入れて純は目にかかる長い前髪の下にある目を閉じて笑った。控え目に大人しそうな笑顔は可愛らしく、垂れ下がった眉は漆を見つけてから嬉しそうに弧を描いている気がする。



「純! 久しぶりー!」

「はいっ! 漆、それに境、久しぶりです」

「ああ、久しぶり。なあ純、どうしてここにいるんだ? 響は?」

「境、簡単なことだよ。頭を働かせて。純のこの様子だと僕たちがここに来ることは知ってたみたい。そしてここは町長の家の前。LEはペアで行動し、同じ任務以外で二組が遭遇するなんてありえない。ってことは、だよ。純たちも僕たちと同じ任務でここに来たんじゃない?」



こいつ、本当に私より年下か? 純を見つけて一瞬で推理したのかよ。まだ10歳だろ? さすが最年少というだけあるというか、将来が頼もしいというか、不安になるというか。今はまだいいが、こいつが成長したら絶対に敵にまわしたくないな。



「……なるほど」

「漆の言う通り、合っています。響はいま町長と話をしていて、私は漆たちを待っていました。町長への話は響に任せて大丈夫です!」



「純ー!」と小さな純に抱きついていた漆は今や彼女と手を繋いでいる。おしに強い明るい漆に、大人しい純が負けているだけかとよく疑われるのだがあれは相思相愛で、純は満更でもないらしい。
漆と純が知り合ったのは養成学校時代からで、詳しく話を聞いていないからよくわからないが、幼馴染みよりも家族、兄弟のような仲だと副リーダーに聞いたことがある。
二人でひとつ、一心同体なんて言葉があるが、彼らを目の当たりにすると兄弟よりもそんな言葉のほうが合っている気がする。無い部分を補い、助け合っている様なのだ。
LEはペアで行動する。
私と漆、弟の響と純よりも私と響、漆と純のほうが何かと合うと思うのだが、どうしてリーダーさんは漆と純をバラバラにしたのだろう。



「境」

「あ?」



近状を報告し雑談をする漆と純を視界に入れていたら、懐かしく、心が落ち着く声がした。もう正体はわかっている。



「よお、響。元気そうだな」