The country where the sea can be seen
 



響と純がその田舎町についたのは境たちが到着するよりも先だった。南半球から帰還した疲れを田舎町に来るまでの列車で仮眠して癒そうとするも、完全に疲れが取れるわけではない。



「疲れたな」

「私は大丈夫……です、よ」

「無理をするな。抱き抱えてやろうか?」

「だっ、大丈夫です! 大丈夫です!」

「……純を抱っこしたかった……」

「へっ!?」

「いや、なんでもない」



まんまるに大きな目を見開いて純の身体が跳ね、響は苦笑をした。
田舎町ののんびりとした雰囲気を感じつつ港を歩いて依頼者である町長の家を目指した。町長の家の位置はわかっていない。そのため町の人に話を聞かなければいけない。響はざっと周りをみて話の聞けそうな人間をさがした。急いでるわけでもない、のんびりとしたこの田舎町のようにおおらかそうな女性をみつけて響は純に「彼女に話を聞こう」と声をかけた。



「すみません」

「あ、はい」

「対寄生者部隊のLEです。町長から依頼があって訪れたのですが、町長はどこでしょうか」

「あら。ようこそ。町長なら家にいるはずです。町長の家はこの道を真っ直ぐ行き……」



響が話しかけた女性は人の良さそうな優しい笑みを浮かべて、わかりやすく響たちに道を伝えた。
響と純は頷いて話をきき、理解をするとお礼を言って女性に教えられた通りの道を歩いた。



「そいいえば純」

「は、はい」

「境と漆もこの町に来るらしいぞ。もしくは来ているらしい」

「境と漆が!?」

「副リーダーは何を考えてるのか知らないが、今回は同じ任務らしい」

「そうなんですか! 漆に会えると思うと嬉しいです!」



頬を緩めて笑う純につい響も頬が緩んだ。
響も実際、双子の姉に会えるのは久しぶりであり、楽しみでもあった。境と漆のどちらが年上なのかわからないコンビだが、相性のほうは合っている。同じ近距離タイプではあるが二人の隙のない攻撃、敵に休みを与えない息の合った連撃は評価に値していた。
響と純は近距離と遠距離の互いの短所を補える典型的なコンビ。人間的に響はロリコンという変態的な部分は持ち合わせているが基本的に年下には優しい。



「ここが町長の家か」

「大きいですね」

「そりゃ町長だからだろう」

「……なるほど、納得しました」

「俺は町長と話をしてくるが、純もついてくるか? それともそこのベンチで境たちをまってるか?」

「漆と境を待ってます! いつ来るのかわかりませんし、バラバラになっては一緒に任務をする意味がないと思います」

「漆関連になると元気になるよな、純。わかった。すぐ終わらせるから待ってろ」

「はい」