It can pierce.
 


無意識に、冷静に。
働いた頭は仲間であった色とその姉、彩の状況を思い出してしまった。
色は死亡。彩は行方不明。
そんななか、南半球で見つけてしまったのは彩。
行方不明のはずの彩だ。

なぜ、こんなところに……?



「っ。……任務を優先させましょう、響」

「いいのか?」

「だ、だって……寄生者の隊長を優先≠ウせるぞと言ったのは響ではないですか」

「そう、だったな」



階段から地上におりた響と純。響はその場で立ち止まり、足を動かすのをやめた。純は響が立ち止まったのも構わず先を歩いた。細い路地裏を出て道路を渡り、寄生者部隊の隊長のもとへと歩く。
響は目を離さず、しっかり純を見ながら袖に触れる。

響は大剣を持ってきていない。
寄生者がいる南半球は武器の所持を許された一部の寄生者以外、武器を持ち歩いていないのだ。当然、許可を貰っていない響は大剣を持ってくることを断念し、袖の部分にしまっている折り畳み式の槍持ってきていた。
目に見えて武器を持っていなければ案外バレない。バレたとしてもどうなるかわからないのだが。

純が隊長を響のいる路地裏に来るよう説得している。純のおとなしそうな外見と幼さは相手を惑わせるのに都合が良い。
どんな嘘をついているんだろうと考えながら響は路地裏の壁に背を預けた。

やがて純は戻ってくる。背後には隊長を連れていた。成功だ。
響は物陰に隠れ、槍を組み立てる。



「……こっちです」



自信なさげな声がした。
響は口角を歪めるわけでもなく、至って冷静に獲物がやってくるのを気配を消して待った。
純が横を通る。
隊長の足が見えた。
隊長が横を通る。
響は物陰から姿を現す。
隊長の背後に回る。
気付かれていない。
槍を両手に静かに構える。
冷静だ。
そして。
貫く。



「ぐあ……ぁ゙っ!?」



酷く濁った声だ。

背中からひと突き。
槍の刃が腹を破って現れた。隊長のそんな呻き声は小さく。
前方にいた純はからだを反転させて、消音器がついた銃の銃口を隊長に向けている。躊躇なく、戸惑いなく引き金をひく。
隊長の体から血が溢れ、飛び散る。
響は槍を引き抜いた。
隊長が倒れた。
倒れた隊長にまた突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。
突く。