騒ぐ騒ぐ騒ぐ
 



あらかたの説明を受けた私たちはとりあえず牢屋に向かうことになった。私たちは警察ではないから道具を使った調査や巧妙な推理はしない。私たちがすることは脱獄を手伝った寄生者を発見して場合によっては殺す。
今夜は寝ずに張り込みだな。



「いらしてくださったのに申し訳ありませんが、武器は持ち込まないでいただけますか……?寄生者を挑発してしまうかもしれませんので」



頭を深々と下げたおばさんを前に私たちは顔を見合わせてアイコンタクトをかわした。目で会議だ。漆は反抗的な目をしていたが、「仕方ないよね」と目をふせた。物わかりがいい。
私たちは応接室に武器を置いて地下までいくことになった。

地下へ続く階段は冷たい。寒さをともないながら、おばさんの背を追う。いくらか扉を開いてあけた空間は息がつまりそうなほどの沈黙があった。
自分の心臓の鼓動がはっきりと耳まで聞こえる。辺りに響いてしまってるのではないかと不安になるほどだ。唾を飲み込む音は確実に知られているだろうな。



「ここです」



おばさんが言うと奥の方から衣類のさする音がした。
居るな。
寄生者は以心伝心。相手の頭の中が読み取れる。寄生者が複数いればテレパシーが可能だ。ただし、自分の思いを伝えるような技術はない。頭の中の読み合いなんだとさ。だから寄生者には会話をしないような奴もいないらしい。というか自分の声を知らない……とか。



「ここに寄生者は何人いるんだ?」

「男女合わせて2人です。装置で調べました。間違いなく寄生者です」

「そうか。漆、どう思う?」

「そうだなー。まあ、境と同じかな。とりあえず」



口にださなくても漆の続く言葉はわかった。
とりあえず今夜は張り込もう、だろう。



「ねえ境」

「あ?」

「わくわくするのは勝手だけど、僕に迷惑かけないでね?」

「はっ」



私は好戦的だ。
双子の弟である響に散々言われてきたし、漆にもいわれている。ふたりだけじゃなく、他のLEの奴らにもいわれた。だが誰がどう指摘しても私の好戦的な部分は変わるはずもなく。
今、私は興奮している。
そりゃそうだ。早ければ明日までには一戦できるかもしれないからな。



「男女のうち、男性の方は軍に送還されることになりました」

「それはいつ決まったんだ?」

「今朝です」

「いつも奴らはいつ脱獄してるんだ?」

「深夜です」

「へえ。よーし。聞け。暗くて見えない所にいる寄生者もだ。今夜手伝ってる奴を殺す」



単純で楽だろ?と八重歯を見せて笑えば漆がため息をついた。