「痛っ」
指を、包丁で切ってしまった。チク、と痛む。切ってしまった左の人差し指をくわえた。 シチューは昨日でなくなっている。私は昼御飯のチャーハンを作っていた。いつもなら一人分でもいいのに、今日から二人分!と、調子にのった矢先にこれだ。……でも、今までのと比べるとまだ運がいい。前は何度も浅い傷ができてたり、血がたべものに付着して大変だった。 今日は運がよかったみたい。
「どうしたの?」
私の声を心配して、昨夜から同居することになった玉乃くんが居間から台所へ顔を出した。 顔立ちはどうみても日本人じゃない。外国人。本人は14歳って言ってるけど身長は私と同じか少し高い。髪は金色。目は碧眼。日本人は生まれつき黒髪黒目が基本。玉乃くんが日本人ではないかもしれないのは目に見えていた。けど流暢な日本語が、やっぱり日本人かも、と思わせた。ハーフなのかな?
「指を切っちゃって」
「……どんくさ」
「あ、こら!私の方が歳上だよ!?歳上にそんな口きいちゃだめって教えられなかったの?」
「背が低いからつい。無意識だから許して?」
無意識のほうが傷付くんだけどな……。 玉乃くんは私の方に近寄ってきて、ちょうど切っている玉ねぎと血が少しだけ滲む私の指を見比べた。
「ね、僕が切ろうか?なんか沙夜がやると……」
「でも今日は調子がいいみたいだから大丈夫だよ」
「怪我しておいて……。玉ねぎが血だらけになるのは食べる側からして嫌なんだけど」
「玉乃くん、玉ねぎ切れるの?」
「それぐらいできるよ」
「玉乃くんが!?玉ねぎを!?玉乃くん、玉ねぎだよ!?玉ねぎ!」
「さっさと包丁を貸せ」
「……はい」
玉乃くん、涙出ないかな。玉ねぎって涙でるでしょ?ティッシュを鼻に詰めればいいみたいだからティッシュでもあげようかな。 そう思って私はティッシュを取りに居間までいったけどテーブルの上にティッシュの箱がなかった。 あっれー?おかしいな。 玉乃くんが動かしたのかな。取り合えず私はティッシュを探すことにした。炬燵の中にはないし、ソファの上にもテレビの横にもない。 変なの。 首を傾げた。……ん?あれ?棚の上にあるじゃん!なんだ、私の見落としか。 苦笑しながら台所に戻ると、驚いた。
ちょうど玉乃くんがフライパンに油をしいて温めるところだったのだ。もう切ったの!?と思ってまな板を見ると、野菜たちはすでに細かく切られていた。
「まさか玉乃くんって、料理できる男の子!?」
「できちゃ悪い?もうすぐでできるからそこで待ってて」
私より料理上手かったりするのかな。なんか、なんか、悲しくなった。 そのあと食べた玉乃くんのチャーハンはとても美味しかったです。
私もまだまだ修行が足りないってことかな。よし、頑張ろう!
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