日付がかわりそうな真夜中。
うちのこたつに私と玉乃くんとちーちゃんが入って暖まる。テーブルの上には昨日の遊園地で撮ったいくつもの写真が並んでいて、玉乃くんは面白そうにそれらを眺めていた。



「雨が降ったときはああ、また私のせいかって思ったけどすぐ晴れて虹が出たのは嬉しかったなあ」



きっと玉乃くんの幸運も手伝ってあんな空が描かれたんだろうな。私の不幸とちょうどいい相性だったりして。
……なんか、玉乃くんに頼ってるみたいだ、私。玉乃くんはもうすぐで帰ってしまう。帰ったらまた私とちーちゃんで暮らしていかなくちゃいけない。私は自分の不幸とまた戦う。今の生活に慣れて玉乃くんに頼ってしまってはいけない。甘えちゃだめだ。いまもちーちゃんのサポートがあるけど、自立できるようにならないと。



「玉乃、いましかないって」

「いや、でも」

「いま躊躇ったって明日までには言わなくちゃいけないだろ」

「そうなんだけど……。見てよ、あの『話しかけるな。集中が途切れる』って言わんばかりの沙夜の顔。話しかけられないって」

「気のせいだ」

「千早の目は節穴か」



玉乃くんとちーちゃんのささやかな話し声がしてふと私は彼らの顔を視界に入れた。ささやかな、なんて表現はしたけれどこの音量……。どうみてもささやかではないし、私に聞こえないようにって隠す気もないみたい。
苦笑いをして私が彼らを見ていると玉乃くんと目が合った。玉乃くんは気まずそうに目線をそらし、なんだか私も気まずくなって写真に目をうつした。



「……たっ、玉乃くんって凄いよね。幸せを運ぶ天使みたい!……なんちゃって。天使、天使、なんて言ってるけど、私キリスト教とかじゃなくて仏教だし」

「……天使」

「痛い目で見ないでね!?でも例えるなら天使っていうか。それの存在を信じてるわけじゃないんだけど……。だって実際に人間の背中から羽が生えてたりしたら怖いか――」

「あのさ!!」



いつまでも夢を見てる可哀想な人だなんて思われたくなくて必死に弁解をしていたら突然、玉乃くんは声を張り上げて私の言葉を遮った。



「こ、この前、僕の出身地を聞いたよね?」

「えっと……。う、うん」

「実は僕、どこの国の人でもなくて、……なんていうか」

「み、密入国者!?」

「ちょっと黙れ。沙夜が分かりやすいようにいうなら、僕はあっちから来た」



あっち、と言いながら玉乃くんが右手で指を指すのは、上。
垂直に、ピンとまっすぐ指を天井に突き上げる。手を丸くまとめ、そこから仲間はずれのようにたてられた人さし指は、見慣れないわけではない。ただ、出身地の話をしていて手をそんな形にして天井を指すのは見慣れないけれども。



「詳しく言うと空じゃないんだけど、沙夜のためにわかりやすく言うなら僕は空からきた。羽はないし、夢見がちな要素はまったくないんだけど、僕は神様につかえてる。つまり、天使」



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