もうすぐで玉乃くんがいなくなってしまうわけだから、どこかに行って思いで作りをしようとおもったのに、玉乃くんがそれを拒否した。



「どうして?行こうよ、遊園地!」

「そうだぞ。ほら見ろ。沙夜がこんなにウキウキしてる」

「だって、今でも十分甘えてるのに。そんなにお金を使わせるわけにはいかな――」

「私が行きたいの!ちーちゃん、車!」

「任せろ!」

「アンタたち、馬鹿なの?」



と、いうわけで!
玉乃くんを引き連れて、ちーちゃんと遊園地へ行くことに!いえい!

遊園地といっても有名なところへは急に行けない。有名な遊園地が近場にあるわけじゃないし。だから地元にある小さな遊園地に行くことにした。遊園地に規模は関係ない!ようは楽しければそれでいいのだ。私は私の体質で周りを捲き込まないように注意を払って遊ばないとね。玉乃くんやちーちゃんに迷惑をかけてしまっては楽しめるものも楽しめない。



「チケット購入!早速ジェットコースターに乗ろう!」

「……千早、ジェットコースターってなに」

「あれだ」

「あれか。楽しいの?」

「人によるな。楽しい奴がいたり怖い奴がいたり酔う奴もいる」

「ふうん」

「玉乃くん初めてなの!?ならば余計に乗らないと人生損してるよ!」

「僕この人のテンションに追い付けない」



冷めた玉乃くんと落ち着いたちーちゃんの腕をつかんでいざジェットコースターへ!列に並んで、その間に玉乃くんへジェットコースターの説明をする。
とくに人気でもない遊園地だからすぐに順番は回ってきた。
結果。



「た、楽しい……!ジェットコースター!」



玉乃くんが目覚めた。
玉乃くんのテンションが徐々に上がってきたころ。丁度お昼時で、私たちは昼食をとるためにレストランの中へ入っていった。そして食べ終わり、外に出ると雨が降っていた。



「……雨……。さっきまで晴れてたのに」

「通り雨だろ。すぐ止む」



なにも言わず空を見上げた玉乃くんは私とちーちゃんの話に参加しないで大人しくしていた。
ふと玉乃くんが辺りを見渡し、すっとのばした人さし指を一点に向けて言った。



「あそこ。雨宿りできそう」



そこはビニールテントのような屋根がついたベンチだった。幸い、誰もいないし雨もほぼ垂直に降っているわけだから雨宿りにはちょうどいいかもしれない。私たちはそのベンチへ駆けて、そこで雨宿りをした。
10分と経たないうちに雨が止んだ。



「あ」

「ん?」

「どうしたの?」



玉乃くんが空を見て不意に短い声をあげたから私たちは気になった。玉乃くんの目線を辿ると、そこにはもう青空が黒い雲の間から覗いていた。



「……に、虹っ」



青空だけじゃない。
そこには七色の虹が描かれていて、とても、綺麗だった。



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