私はテレビを観ている玉乃くんの視界を遮って言った。
「玉乃くんのこと知りたいからいくつか質問に答えてもらいます」
「……テレビみえないんだけど」
玉乃くんの冷静な言葉は聞かなかったことにして、続きを話します。 そういえば玉乃くん、最近クイズ番組をよくみてる気がする。私が視界を遮っているテレビから賑やかな音が流れ、出演者の笑い声がする。好きなのかな。
「私、よく考えたら玉乃くんのこと知らないことに気づいたの。ちーちゃんならどこで生まれたかとか誕生日とか好き嫌いもわかるんだけど、玉乃くんのことは全然。だから教えてほしいのです。さあ、質問に答えてもらいます!」
「はあ?僕のこと知ってどうするわけ」
「近づく。心理的に!」
「たしかに物理的にいま近いしね。他に近づくっていったらそれしかないか。っち」
し、舌打ち!? 玉乃くんの両肩をいつの間にかガッチリとホールドしていた私と玉乃くんは物理的に近い。 というか玉乃くん、私より年下だよね?年上に対する礼儀とかあるでしょ!?説教、なんて年下にする年上っぽいことをしようかと思ったけど年齢がどうとか、どうでもいいね。猫を被られるよりいまのまま、素でいてくれたほうがいいし。
「じゃあ質問するけどいい?」
「仕方ないから答えてやるよ」
「随分と上から目線ですね……。はじめに、玉乃くんの誕生日と出身地から」
「パス」
「いきなりパス!?」
というか誕生日と出身地くらいいいじゃないか!私なら誕生日は8月16日で出身地はこの町の病院、とすぐ答えられるのだけれど。 まあ、本人がパスというのだから追求はしないでおこう。
「じゃあ次ね。クイズ番組好きなの?」
「好きとかいうより、これ勉強になる」
「……勉強熱心……。次は、玉乃くんの好きなものはなんですか」
「うーん。気にしたことないなー。ちなみに嫌いなものも」
「え!?ピーマン食べれるの!?」
「馬鹿にしてるの!?」
テレビの音をBGMに、私は驚いた。私はピーマンを高校生になってやっと食べれるようになったのだ。まあ、かわりにナスやトマトは小さい頃から食べられたのだけれど。 好き嫌いがないのは……その、子供としてどうなんだろう。子供だから好き嫌いはなければならない、なんていう義務はないが、玉乃くんの場合は奇妙な気がするし、簡単に拒絶することなく受け入れることができる気がする。
「珍しいね。好き嫌いがないなんて」
「そう?普通だと思うんだけど」
人工の光で輝く金髪を揺らして玉乃くんは首を傾げた。それがまた綺麗で。この子は容姿に恵まれているとつくづく思う。
「じゃあ、もう少し続けるね」
「まだやるわけ?」
「いいの、いいの。次は――」
不満を隠さず表情に表しながら文句をいう玉乃くんを私は流して質問を続けた。
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