SSS
目を覚まして、まずはじめに認識したのは自由のきかない手足。次に白い空間。最後にオレは捕まったということだ。 背中側で縛られた手首はきつく縛られており、抜け出す余地などない。両足も同じだ。舌打ちをする。武器も没収されている。ちょうど六メートル先の壁に掛けられオレから隠すどころか、武器は没収したぞ、と見せつけられているようで腹が立つ。舌打ち一回じゃたりないな。
(……なにも、ない?)
この部屋、なにもない。監視がないのだ。なんのつもりでオレを捕まえたのか知らないが、監視をつけなくてもいいのか。それほどまでになめるれているのか。 まあいい、今は手足を縛る縄をどうにかすることに専念しよう。幸い、縛られているのは手足だけなのだ。靴に仕掛けられた刃物で切ってしまえば……。
「ソラの監視係がいないってバカじゃないのか」
「バっ、バカ!? ぐ……言い返せないけど……っ」
「まあまあ、ゆうりくんも明ちゃんも落ち着いて」
「あ、ソラが起きたみたいだぞー!」
緊張感のない四人の男女の声と共にこのなにもない部屋のドアが開かれた。そこにはすでに顔見知りの明と光也をふくまれている。 目のつり上がった目付きの非常に悪い少年と、黒髪おさげの落ち着いた少女。明はオレの前に座り込むと、彼らの紹介をまずはじめに行った。
「おはよう、ソラくん。目付きが悪いのはゆうり、優しい女の子は瑞希だよ」
「……なんの用?」
「ソラくんは人質なんだって。私たちはソラくんに怪我をさせよう、なんて思ってないよ。ちょっとの間、ここにいて欲しいの。私たちが帰るまで」
「?」
なにを言っているのだろうか。 帰るのに人質が必要な状況下にあるということか? 一体、どんな……。
「実は俺らさー、過去から来たみたいなんだよ。ずっと昔から」
「ちょっ、光也くん!?」
「別に言ったっていいんじゃね? 秘密にしてるってわけでもないし。むしろ協力をあおいだ方が手っ取り早くねーか? なんか美紀のやり方って悪役臭くて、俺好きじゃないんだけど」
「でも、言ったら警戒されないかな? まだ言うには早いと思うよ」
「俺は瑞季に二票。光也、てめえに勝ち目はない」
「んだと! てかなんで二票なんだよゆうり!」
「明の分にきまってんだろ。明はバカだから清き一票を有効活用したまでだ」
「バカじゃねーの、ゆうり! バーカバーカ!」
「うるっせえ、アホ」
人質の前で喧嘩をしないでほしい。彼らは仲の良さ故に喧嘩をしているようだが、敵の前で空中分裂するような発言はやめた方がいいのでは。……待てよ。こんなことをするってことは、明たちは人質に対して慣れていないということか。 脱出の余地はありそうだ。
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