SSS
帰還してからすぐ、ロビーで解散となった。いつの間にか時間は過ぎ、明け方らしい冷えきった空気が場を満たしていた。リカから「解散だ。各自、報告書を提出するように。ラカールとチトセは部屋で休め。ウノ様には私から伝えておく」と、言われた直後にルイトは頭をかいた。表情はただ、悔しい、の一言に尽きる。
「……ルイト」
励まそうと、ミルミの手がそっとルイトに伸びた。静かに、優しく、ルイトの背中を撫でた。シングも、手をルイトの肩に落とす。
「ソラとツバサの救出はどうするんだ?」
そう聞いたのはチトセだった。つい先程まで捕まっていたせいで、疲れきったラカールの肩を抱いて気遣う。この場の誰もが気にしていることだ。 リカは冷静そのものを貫き通しながら、焦ることなくチトセに答える。
「私が急いで報告書と集会の申請書を提出する。きっとすぐに集会を開いてくれるはずだ。私たちは下りてきた指示に従う。いいな」
最後はルイトに向けて言ったものだ、「ああ」とルイトは呟くような声で返事をする。 解散の名に等しく、みなバラバラになって各自ロビーから消えていった。ロビーにあるソファにルイトが深く、倒れるように座り込んだ。残っていたシングとミルミがその向かい側に座った。
「大丈夫か、ルイト」
「……馬鹿みたいに落ち着いてる」
「あまり悲観的にならなくてもいいだろう。ツバサがいるんだ。信じようじゃないか」
「わかってる……」
仲間が、親友が目の前で消えることを絶対的に良しとしないルイトには、ソラが目の前で消えたのは痛恨だった。
「一度、寝てみてはいかがでしょうか。疲れているでしょう、ルイト? 私には落ち着いているというより悲しんで見えます」
「ああ、そうした方がいい。部屋まで送ろう」
「いや、大丈夫だ。寝ることにする。ありがとう」
ルイトはふらりと立ち上がると、自分の部屋へ向かって歩き出した。その足が階段へ向き、姿が見えなくなるまで見送ると今度はシングが立ち上がった。
「さて、俺たちも休むとしよう」
「はい」
ミルミは見逃していなかった。シングの首筋をつたった一筋の汗を。 真冬であるのに汗などかくひつようはない。早朝であるせいでまだロビーには心地よいほどの暖房はまわっていない。少し肌寒いくらいだ。シングの汗は異変。その異変の意味を、付き合いの長いミルミは知っていた。 呪いの進行だ。 進行頻度が以前と比ではない。 ミルミはシングの見ていないところで歯を食い縛った。
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