SSS


 

「……ソラを、俺の仲間を、どこに連れていったんだ」



ルイトは自分でも驚くくらいの殺気を放っていた。ルイトのその言葉に明と光也はどう答えたらよいのか分からない。こんな妨害があるとは思わなかったし、唐突のことで彼らにもその行き先と目的は知らないのだ。

ルイトは、二度、ソラが死んだと聞かされた過去があった。
一度目はソラが津波にのまれたと。
二度目は目の前で高所から落ちていった。
その度に味わう虚無、ソラを失うことへの恐怖、寂しさ。呪いのせいでいつ本当に死んでしまうかわからないギリギリの縁を歩いているソラ。ルイトは、ソラを失うのが怖い。



「ソラを、どこに!!」

「……っ」



答えられない。



「なんで……ソラはいつも、一人で……」



悔やむように。



『――聞こえるか』



そして、唐突に無線が入った。この声はルイトのよく知った声。シングだった。ルイトは用件を促す。



『ラカールとチトセを見つけた。撤退しよう』

「待て、ソラが……」

『ソラがどうした? そこにいないのか?』

「連れていかれた。行方がわからない」

『なんだと?』

『ルイト、シング。それからこの通信を繋げてるのは誰?』



シングのあとにツバサの声が割って入ってきた。それから後にリカ、ミルミ、ラカールとチトセの、ソラ以外全員が聞いていることが確認された。ツバサが黙ってしまったせいで、誰一人口を開かない。
その間にルイトは明と光也の様子を窺って見てみると、彼らは大人しくルイトの用が終わるのを待っていた。



『分かった。俺はこのままここに残ってソラを探すからリカたちはさきに帰ってて』

『バカか!? ボスを置いていけるか! 私が残る!』

『落ち着いてリカ。こいつらは俺を捜してるんでしょ? 俺なら見つかったところで死なないし、見付からない自信もある。大丈夫』

『なにが大丈夫、だ!』

『リカにはこのアジトの全体図をはかって貰ったよね? それを持ち帰らないといけない。ルイトにこんな任務はまだ早い。ラカールとチトセはすぐに休ませたいし、そもそもシングとミルミは俺の部下じゃない。俺が残るよ』

『っく……。たしかにその通りだ。ツバサにはまだ仕事が山ほど残ってるんだ。早く帰ってきてくれ……』

『なるべくその頼みに答えよう。あとのことは任せたよ、リカ』

『了解だ』



ブツ、もツバサの通信だけ切れる。そのままリカは撤退の指示と、ルートを伝える。ルイトはツバサに任せて、すぐに撤退することになった。「帰る」と明たちに伝える。背を向けても明と光也は騙し討ちなどせず、ただルイトの背中を見送った。そしてルイトの姿が見えなくなると、明は美紀の元へ走り出した。ソラのことについて、聞きたいことがある。