SSS


 

オレの銃撃は明には効かず、すべて鉄で防がれてしまっていた。舌打ちして、接近する。明が持っていた大鎌を蹴って攻撃を防ぐとその頭に銃口を向けた。だがすぐに鉄が阻んで邪魔をする。



「ソラくん、怪我をしてもしらないよ!?」

「怪我なんかが怖くて戦えるか!」

「だったら……知らないよ」



視界が水面のように歪んだ。曲がり、歪曲する。遠くでルイトがオレを呼ぶものの、なぜかそれに答えることはできず、ゆがんだ世界におちていった。

そこは、知っている風景だ。
青いはずの空が赤く染まり、すべてを呑み込む青い海原も赤を反射していた。オレの――僕の――私の手は真っ赤に染まり上がり、それとは比べ物にならないほど大量の赤が足下を覆っていた。なにも刻まれていない左手が空をあおいだ。私はただ無言でそれを見、そして絶望する。すべての人が死んだことよりも、死を通して一切の感情がなかったことに。
私だけおかしいのだろうか。
私だけみんなと違っていて。
私だけ。
私だけ……。
そんなことばかりが私を支配する。
いつも私だけ違っていた。私だけ違う。
私だけ違うのは嫌だ。私だけ――。



「――ソラ! おい、大丈夫か! ソラ!!」



ルイトの声が鮮明に聞こえ、はっと目を覚ました。
脳が痒い。



「ルイト……。ッつ!」



唐突に痛みを感じて目を向けると、足のちょうどふとももあたりにいくつもの風穴が空いており、血と変形した肉でぐちゃぐちゃになっていた。足の付け根はルイトの服の袖で縛られており、血は止まっていたが、痛みが消えるわけではない。オレの応急処置をしていたせいでルイトの手や体のあちこちは真っ赤に染まっていた。



「お前、急に自分で撃って……」

「え?」

「あの明に何をされたんだ?」

「ルイト、今はそれよりも」



立とうとして、力が入らなかった。
少し離れたところにいる明と光也を睨み付ける。
くそ、痛い。このまま動かなかったら殺される。 まだ死ぬわけにはいかないのに。こんなところで死んでいる場合などではないのに!
――動け!



「っ!?」

「なんだ!?」



驚いた声は明と光也の方からだ。二人がオレをみて驚き、ルイトも息をのんでいた。異変はオレ自身にも感じられた。
足元が唐突に光ったのだから、気付かないわけがない。それからのことは一瞬。



「い、嫌だ、ソラッ!!」

「ソラくん!」



ルイトが離さないとオレを掴み、明も敵とは思えないような表情でオレに手を伸ばす。大鎌を捨ててオレに手を伸ばすのだからよっぽどだ。
これは召喚陣? みたこともない文字が並んでおり、その陣の大きさは座り込んでいるオレを囲う程度しかない。そしてその陣を囲うようにそらに陣が描き出される。黒にも近い紫で描かれたそれは、明らかにただ何かを召喚するものではない。



「美紀……!」



光也の歯を食い縛る音。明がオレに触れる寸前。ルイトの腕がいっそう強くオレを掴む。
そしてオレはなにもできないまま、その場から消えた。