SSS


 


「……なにこれ、最悪」



そうオレが呟く。隣でルイトが唾を飲み込んだ。拳銃を構え、目の前にいる敵に照準を合わせる。本当、最悪。



「あ、えっと……」



敵――明はなんとも緊張感のない表情をしているが、その手にもつ大鎌は彼女と不釣り合いなほど爛々としていた。また、明の隣にいる光也は双剣を持って、確かに敵意を示していた。府抜けているのは明のみだ。いや、明は府抜けているというより、状況がうまく掴めていないというか。結局バカか。



「緊張感のない奴」



小さく呟いて安全装置を外した。ルイトは弓矢を取り出して構える。その殺気を感じとり、さすがの明も大鎌を構えた。



「どうしてソラくんたちがここにいるの? なんで、ここが」

「ラカールとチトセを返してもらいに来たんだよ。二人はどこ?」

「え? ちょっ、ちょっと光也、本当にツバサの組織の子を誘拐してきたの!?」



情報が上手くまわってないのだろうか。明は誘拐の件を知らないように見える。光也は必死に取り繕おうとしているが、明が迫るので弱っていた。



「ソラ、あいつらは……」

「オレが前回の仕事で戦った奴ら。サイドテールが明で、茶髪のヘアピンが光也」

「あれがか。報告書は見た。ここで倒せるような相手じゃない。通り抜けるぞ」

「了解」



オレが引き金を引いた。
唐突のことで、口論している二人に割り込むように銃声が鳴り、廊下をずっと響かせていた。なんの予告もなく起こったそれに、明と光也は静まり、やがてその痛みに気が付いた。ぼんやりしている間に再び数弾ぶちこむ。



「――いッ」



痛みに光也が顔を歪めた。光也の右手に一発、両足にそれぞれの一発、そして明の両足にも一発ずつ。意外にもこの痛みに、明はほとんど見られなかった。
オレがルイトを率いて二人を通りすぎようとした。しかし、撃たれた利き手で召喚陣を描いた光也はこの廊下に壁を召喚し、オレたちの行く手を阻んだのだった。



「行かせねえ……!」



そして、不思議な現象が起こった。明の足の怪我が塞がったのだ。いや、これはツバサのような治癒能力などではない。ただ、怪我を負っていない部分の肉を溶かしているのだ! 激痛が伴うはずだというのに、明は少し奥歯を噛むだけだ。それて無理矢理、出血を抑えてしまった。それどころではない。銃弾をも傷口が吐き出してしまった。
バカだバカだと思っていたが、彼女は……。



「光也、大丈夫?」

「俺なんかより明は?」

「大丈夫だよ」



仲間が怪我をするのが許せない。しかし怒りに身を任せる訳ではない。ただ、許せない。そういう人だ。



「……帰るつもりはないんだね、ソラくん」

「もちろん」

「ここには、知られたくないものがある。だからソラくんたちをこれ以上進ませるわけにはいかない!」



負傷した光也を守るように明が前に出る。そして、前回と同じように鉄の塊を浮遊させた。一丁の拳銃を両手でもち、オレは明の心臓を狙った。ルイトに光也を任せる。