SSS


 

中への入口はルイトがすぐ見つけ、入ったとたんに地下の冷えきった風が首を撫でた。寒気がする。



「『闇に属する影よ、私に従え。一時の契約を成し、私が光から守ろう……。クランミャ、ダウ、ライア』」



歌うようにリカの小さな声が呪文を唱え、口ずさむ。目に見える変化はないが、リカの魔術は成功したようだ。それを確認したツバサは「はいはい、仕事を始めてー」と言い、オレたちはそれに従うこととなった。入口からここまで梯子で繋がっていて、この開けたところから二つに道が別れていた。



「ルイト、君はこっちにおいで。リカはシングたちについていって。二手に別れた方が良さそう」

「ああ俺もそう思う」

「シングもそう思うなら私はツバサに従うことにしよう」



リカは頷いてシングたちの方へ歩いていくと、彼ら三人は奥へと進んでいった。臨機応変にいくことにしたのか。オレたちについてくることになったろルイトは了解して、オレたちと一緒に来ることになった。

先頭をオレが歩く。ツバサが前へ進もうとしたのを阻止してオレが進み出た。良眼能力を用いて前を確かめながら進む。時々、壁にドアが見えたが、ルイトの良聴能力か何もないというので次へ次へと進んでいった。はじめの数分はそうであったが、相手も侵入者に気付いたようで、ときおり変な人外が出てきたりしたがすぐに撃ち殺した。



「何、さっきの。コウモリ?」

「みたいだったな。俺は弓矢だからソラのほうが倒す数は多いだろうな」

「ルイト、銃にしたら? 使えるんでしょ?」

「こっちのほうが慣れてる」

「ふうん……、まあ止めないよ」



オレたちはツバサを守るように立ちふさがるが、コウモリは大量。まだやって来る。リロードしてオレはコウモリを撃ち、ルイトは射る。ツバサはなんの躊躇いもなく、ごく自然な流れでコウモリを掴むと羽を広げてまじまじと眺める。



「ああー、これ、殺しても無断だよ。召喚師によって呼び出された探索するしか能がないやつ。戦闘能力とか戦う意思も皆無。動く監視カメラみたいなものだから放っておいても構わないよ」



残酷に、コウモリみたいなそれの羽をもぎ取りながらツバサは涼しい顔で言う。まあ、エグいことを……。



「俺が囮になるから君たちは仕事をしておいで。はじめからそのつもりだったし、彼らは俺に用がある。俺が引き付けるからラカールたちは任せたよ」

「ツバサが囮っ? そんなこと出来るわけがないだろ、ボスだぞ」

「別に死ぬわけじゃないんだから。俺の異能、忘れたの?」

「……不死、だけど……、でも」

「ルイトは優しい。でも今はその矛先は俺に向けるんじゃなくて、ラカールとチトセに向けるべきじゃないかな。彼らは何をされているのかわからないんだよ」

「……っ」



オレは無言でルイトとツバサを眺めていた。まあ、ツバサを囮にするのはオレも賛成だ。道徳的に上司を囮にするのはどうかと思うが、これは効率的であることに間違いはない。おそらく明たちはツバサを注目している。それに相手は少人数。ツバサが引き付けるというなら絶好のチャンスであることになる。
オレはルイトの腕を遠慮なく掴んだ。そしてツバサを置いて先を進む。一瞬だけ抵抗して見せたが、ルイトはオレとツバサを置いていった。