SSS



13歳。
毎晩のように人を殺す、日課。人を一人殺して、やっと一日分だけ生きられる寿命しかない呪いの末期。そんな過去がこのミソラ・レランスには存在していた。

真っ黒な意識のなか、過去が蘇る。抑えつけられていた記憶が、漏れる。

まだ組織が四つで、四人のボスが各々の組織を持っていた頃だ。オレ――僕たちはまだ学生だった。異能者の学校に通う、そんな中、僕は暗殺業も兼用していた。ルイトとシングとミルミとジンとレイカ。いつも六人が一緒にいて、学生の日常生活を過ごして。夜になったら人を殺して。毎日毎晩。繰り返す。
転機は、訪れるもので、僕は過去に犯した事件を何も知らなかったルイトに調べられて、何度か死にかけて。魔女を追って。

忘れないで、過去を。あの事件を。燃え盛る、あの島を。僕が葬った、僕の世界を。僕が死んでいなければならないはずの存在だって。死んでいるはずの存在だと。僕が生きているのは有り得ない。世界から抹消されるはずなんだ。
それでも、僕は生きてる。生きて、魔女を殺すために。



深夜のことだ。僕は逃げる女の背を追っていた。石造りの道と獲物のヒールが音を立て、逃げる意味を成さない。僕は刀身が真っ黒な刀を構え、女の背を斬る。血が吹く。こうして、明日も生き延びられる。呪われて、刻印が刻まれた左腕を握り締めながら、僕は死体の血を見下ろした。そこに感情は何も宿ることはなかった。



「深青事件」その言葉がルイトの口から発せられたとき、発狂しそうになった。左腕がちくりと痛んだ気がした。頭の奥から誰かが僕を蔑んだ。



ルイトが真実を知った。僕は知って欲しくなかった。
僕の手は血で染まりきり、汚い。



暫くして、日をいくつか跨ぐ。
僕はあの島に立っていた。魔女を、今度こそ殺そうと思って。でも、結局、僕は、津波に飲み込まれた。あの島は、例の事件以来おかしくなってしまっている。島は沈みかけており、ゲリラ豪雨も突風も、津波や地震だってよく起こる。現在の人は誰もいないため被害者はいるはずがない。僕はその島で姿を眩ませたのだった。



あの島? 例の事件? オレには、さっぱりわからない。
ほんとうに?
何か、思い出しそうだ。よく思い出せない。でも今のオレが確実に分かることといえば、オレがどうしようもない殺人者で、救いようもない人殺しであることだ。
ついこの間まで、そんなものとは縁のない一般的な学生だったのだ。後藤さんと、雄平と過ごす日々は非日常とはかけ離れた生活。それがとても楽しかった。どうしようもない馬鹿なことばかりやっていた。それが一時的な紛い物の日常だとしても、確かに日常だった。楽しい夢だった。



「ソラ!」



知ってる声。そのあとに続いた起きろと言う言葉でオレの意識は徐々に覚醒していく。



「ソラ、大丈夫なんですか?」

「いま起きれればね。ソラの精神力は弱いから、みんなして起こしてあげないと」

「よぉし、俺がもうちょっと気合いを入れて……」

「マスター、ほどほどにしてくださいね」
   


え? 待って、何をする気なの? 待った待った。いま起きるから。
目を開けると、真っ暗から唐突の光が目を刺激した。