指示


「『黄金の血』……、なるほど。先ほどソラに相手をさせた奴等だな」



明たちのことか。
オレやリカが介入する間もなく、ツバサとウノは話し合って、最終的に集会をすることに落ち着いたらしい。



「リカ、集会するよ」

「今からか? リャク様とカノン様を集めればいいのだな」

「一時間後でいいよ。どうせあのチビはくだらない研究してて、カノンは寝てるんだから。とくに急用はないはず」

「了解した」



リカは頷き、また医務室を出ていった。ウノ様はすぐ近くにいるナイトにこの状況をメモに取らせ、オレとミントのもとへフワフワとやってきた。



「ツバサがミントを治したのか?」

「あ、はい」

「相変わらず馬鹿げた治癒の異能を持っている。……ソラ。この世界にはもうなれたか?」

「……なれた、といえるほど馴染めてはいません。しかし、落ち着きます。記憶は曖昧ですが、この世界が、拳銃の引き金をひくことが、当たり前なんだと思います。そりゃ、ついこの間まで学校生活を送ってましたけど……あれは、長い夢を見ていただけのような。そんな感覚です」

「私はソラに無理をさせてしまっているな……。すまない」

「気にしないでください、ウノ様! また会えることができてオレは本当に嬉しいんですから」

「そう言ってもらえると助かる……」



頭を下げるような仕種を人形でしてみせる。本当に申し訳なさそうにするのでオレは今一度、大丈夫だと言った。奥ではナイトが仕方なさそうに肩をすくめている。



「ウノ様。私たちはウノ様に助けられたんですよ。ウノ様に尽くすのは当然です。ソラも気にしていないのですから、ウノ様」



ナイトがフォローに入る。ナイトの言わんとすることはウノ様にもわかるはずだ。ウノ様は「ありがとう」と感謝を述べる。ナイトは凛とした声で「当然です」と返した。



「……さて」



いままで黙って事を眺めていたツバサが顔をあげた。先ほどまでミントの様子を診ていたツバサは手を叩いてオレをみる。なんだろう。



「ウノ、ソラを借りてもいい?」

「ああ構わんよ」

「ありがとう。ソラ、ついておいで」

「? はあ……」



手招きをするツバサに素直についていく。その前にウノ様に頭をさげ、医務室を出るツバサに急いで着いていった。