毒針のような



ピンク色の肉も今や血に染まり、ヌメヌメとした手でミントはダーツを抜く。オレはミントの前に盾になるようにして立ち、状況打破を考えた。

美紀は強い。召喚師として、あの歳ですでに熟練の実力がある。そんな人物を相手に、どうしたらいいものか……。



「ミント、テレポートは?」

「この痛みで集中できなくて出来ません。座標指定が正確ではないので危ないです。申し訳ないです……」



ミントはうつむく。
テレポートが出来ないということはこの場は逃げ切れると思わないほうがいい。美紀にお帰り願わなければならない。



「美紀!」



美紀にこれ以上の攻撃はさせないと、明は手に持った球体の鉄を美紀に向ける。美紀はそんな明に呆れたようで、彼女に溜め息を吐いた。



「明。あなたが馬鹿なのはもう治らないと諦めているわ。でもその甘さだけは治しなさい。世界中の人間が明のように優しくないの。自分や仲間を守るには敵を攻撃するしかない。……遠くから見てたわ。あの金髪は空間転移能力を持っているようね。ツバサに私たちのことを報告させることには賛成よ。でも空間転移能力は危険」

「ど、どういうこと?」

「ツバサに報告させれば私たちの拠点がバレるまで時間はかからないでしょう。ツバサが私たちの知っているツバサのままであると保証できるの? もし奇襲されたら大損害よ。機動力は少しでも削いだほうがいいわ。幸い、空間転移能力は珍しい能力ではないけれどたくさんいるわけでもない」

「……」

「報告をさせて泳がせましょう。対策を練る時間はできるはずよ」



明は美紀に向けていた手を下ろした。「ごめんなさい」と言って顔をそらす。美紀の言うことに納得させられたものの、感情面では罪悪感があるのだろう。
右手を動かし、美紀は空中に召喚陣を描く。指の先から発光する線が出る。まるで透明な紙が宙に存在しているかのようだ。手慣れた様子で、召喚陣はすぐに完成した。その陣から複数の針が飛んできた。裁縫で使うような小さな針ではなく、武器として特化した針だ。

避けられない。
避けてしまえば、ミントに刺さる。

オレはすぐにミントを抱き締めるようにして針の盾になった。背中に針が刺さる。ミントが何か言っていたが、彼女の言葉を聞いている暇などなく、それは訪れた。



『あらあら、可哀想に』



左腕が、酷く熱いのだ。