多重能力者



銀色の塊に隠れた明が次に姿を見せたとき、その手には大鎌がにぎられていた。つい先ほどまではそんなもの、持っていなかったはずだ。一体あれは何処から出てきたというのだろう。光也が召喚術でも使ったのか……?
そんなことを考えている間に、明は大鎌を構えてこちらに突撃してきた。銀色の塊を盾にするようにしてやって来るため、大型武器の構えに隙があっても銃撃を加えるには難しい。



「ソラくん……」

「ミント、戦闘の援護は頼める?」

「でも、ソラくんは病み上がりみたいなものです! 私が前線に出ますから」

「オレは大丈夫」



戦いかたは分かる。自然と次の行動に迷いはない。
腰に巻いていたガンホルダーから別の拳銃を取り出した。二丁の拳銃を左右の手にそれぞれ握る。



「分かりました……!」



ミントは強く頷いて下がった。

明が大鎌を振る前に銀色の塊がオレに向かってやってきた。とても速く動くが、オレのこの目にとって障害にはならない。隙間に入って、それらの攻撃を掻い潜る。そして彼女のわき腹を蹴り飛ばした。……はずだった。確かに彼女のわき腹を蹴ったはずだった。それなのに、その明だと思っていたそれは煙のように消えてしまったのだった。



「っ!?」

「ソラくん!!」



後ろで風がなった。すぐに前へ回避した。背後でドンと重たいものが落ちる音がする。あれは学校を囲んでいたフェンスではないか。ミントのテレポートだろう。
フェンスの向こうには明がいる。いったいどういうことだ? なぜ、明はオレの背後に? 目の前にいたではないか。



「……まさか、多重能力者……!? あ、あり得ません! 多重能力者の存在不可は歴史の科学者たちが証明しています! でも、だったら……、これは……」

「ミント、どういうこと?」



銀色の塊を従えた明を間に、オレはミントに聞いてみる。ミントは明を、信じられない奇妙なものを見るような目付きで見ていた。



「我々異能者はの異能は、脳に宿り、脳で操っていると言われています。つまり手足を脳で動かしているようなものです。そして、脳には容量が存在しているんです。異能者は無能者に比べてその容量は大きいと言われていますが、その大きいと言われる容量の部分は大半を異能が占めています」

「その容量の限界を超えた、ありえない存在が多重能力者?」

「そうです。本来はそれ以上、容量は大きくならないはずなんです。そんなことをすれば通常、異能者はただでさえ無能者より短命な寿命を一瞬で燃やし尽くします」

「それなのに明がいる……。一瞬で寿命を燃やし尽くすのに、平然と存在する明はおかしい」

「はい。私が目視した異能は念動力のような異能と、幻……」

「あの大鎌は空間系の異能で取り出した可能性もあるね。厄介だ」