明と光也
「あの茶髪、召喚師か!」
「警戒してください、ソラさん!」
オレは舌打ちをした。 先ほどまで盾だった銀色の円盤は空中で柔らかく曲がり、そこから針のようなものが飛び出た。オレは体を右に傾けてそれを避け、ミントはテレポートして避けた。
「茶髪じゃなくて、この人は光也っていうの! ちなみに私は明」
「……明、光也。さっさと帰ってよ。それから二度と来ないで」
名前呼びをご所望だった明に答えると、彼女は拗ねた。相手がこうも喜怒哀楽の表情豊かでフレンドリーだとは……。ミントが困った表情をしている。
「あ、えっと、私はミントです。こっちの男の子はソラくん」
「……ミント、なにしてんの」
「自己紹介されたら一方的なのは可哀想かとおもいまして」
「敵に名前を教える必要は無いでしょ。……っ!」
オレが呆れていると、足下にふわりと風がなった。自然の風とはちがって、何やら嫌な予感がする。嫌な予感というのは大抵当たるものだ。すぐにオレはその場から離れる。するとオレがいたところから突風が吹き、竜巻が一瞬見えたかと思うと消えた。光也が舌打ちしている。
「ソラ!」
「!」
後ろからシングの声だ。耳の隣をヒュンッという音とともにナイフが光也を目掛けて飛んでいったが、やはり銀の盾が防いでしまった。しかしそこに連続して、横から鎖が飛び込んできた。ちょうど、盾でカバーできないところだ。鎖が光也をガッチリと掴むまでシングはナイフを投げ続けた。明も光也も驚いた声をあげたが、明はすぐに鎖に手を伸ばした。異能を使おうとしているようだが、盾のように鎖を操ることができなかった。
「男のほうは俺とミルミがなんとかする。ソラたちはもう片方の子を頼んだ!」
「了解」
シングはミルミに合図した。ミルミは鎖を持った両手を上半身も使って引いた。あの小さな体の、細腕から発せられた力だと疑うほどの力を発揮する。グン、とミルミが引っ張れば、光也はミルミの引いた方に姿を消した。明は消えた光也にポカンと口を開いている。 隙あり。 オレはリロードするまで撃ち込んだ。しかし、やはりというべきか、銃弾は防がれている。
物体を操る異能……彼女は念動力の異能をもっているんだろうか。とりあえず光也とちがって召喚師や魔術師、封術師ではなく能力者なのは確かだ。
新しく銃弾を装填しながら、ふにゃりふにゃりとうごめく銀色の塊を見ていた。
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