サイドテールの少女と茶髪の少年




明と光也が空間転移に似た異能で廃校に降り立ったとき、まず初めに違和感を感じた。いつもと違う。普段ならまっすぐ目的地である、とある組織の本部へ行くというのに、今日は二人で足を止めて動かなかった。



「なんか……変だよね」

「明も思う? おにぎり食べてないせいかと思ったけど、そうじゃなかったか……」

「もー、おにぎりおにぎりって! 光也がそんなこというから私もおにぎり食べたくなっちゃったよ! おにぎりー!」



両手で三角をつくり、おにぎりを主張する明は頬を膨らませた。そんな二人の足元が、唐突に弾けた。遅れて、バァン……、と何やら聞き覚えのある音がする。その音を認識してから明と光也は驚いて、同時に違和感が確証に変わって警戒した。



グラウンドよりもわき、手入れのされていない見棄てられた木が密集する区域に見知らぬ男女が現れた。どちらも高校生らしく制服を着ている。あれは、ミントの資料で見せてもらった人物にそっくりだ。十中八九、あれが今回の標的だろう。
ミントにそれを伝えれば、すぐにテレポートして、数十メートルも離れた地点に降り立った。そこからオレは拳銃で威嚇した。



「誰だ!?」



向こう側の、茶髪がこちらを向いた。いまの一瞬でオレとミントがいる方向を当てたというのか。無駄話をしているかと思いきや、なかなか手強そうだ。
拳銃の照準を相手の頭に狙いつけた状態のまま、オレは姿を現し、彼らを間近で目視する。



「あなたたちが最近、うちの組織の周りをウロウロしている人たちに間違いはありませんよね?」



ミントの一段低い声音が彼らに投げつけられた。少女たちは顔を見合わせて、それから肯定する。



「ってことは……、あなたたちはあの組織の一員?」

「そうですよ。私たちはあなたたちに、即刻帰ってもらうために来ました。……というか、二度と来ないでください」

「無理な相談だな」



茶髪は首を振った。
拳銃の照準が下にずれて、いく。



「俺たちはあの組織にいる、ある人に用があるんだ。今、お前たちに用はない」



オレが、茶髪が、同時に動いた。
人差し指を動かして、足に狙いをつけていた拳銃が鳴る。茶髪が一歩さがり、サイドテールの少女が腕をこちらへ突き出す。彼女の手のひらから銀色の球体が飛び出してきて、オレと茶髪の間に止まると一瞬にして円盤に広がり、盾になった。盾はオレの縦断を塞いでしまう。舌打ちをした。

茶髪は眼前に円盤が広がっている間に、高速で右手を動かして空中に光る陣を描いていた。