黄金の血




「えー、やっぱお昼御飯はパンだよー!」

「おにぎり嘗めんなよおにぎり! 何にでも合う万能でおいしい米がぎゅっと凝縮されたおにぎり!」

「パンだって万能だよ! 潰して丸くすれば消しゴムにもなるんだからね!?」

「まじか! すげえ! でもおにぎりは譲らない! 西洋かぶれめ!」



明るい男女の言い争いがとあるコンビニで行われていた。周囲の客はそんな彼らを避けて商品を選び、会計しているが言い争いに夢中の男女は気付いていない。



「おい、明。光也。うるせえよ」



周りに遠慮がない彼らの頭を叩いたのは目付きが非常に悪い少年だった。明と呼ばれた少女はサイドテールにまとめた黄土色の髪を揺らして振り返り、少年の登場を喜んだ。しかし光也と呼ばれた少年は腕を組んで少年を睨む。



「だって、おにぎりは譲れないだろー?」

「馬鹿かてめえ。ここは日本じゃねえんだよ。おにぎりが平然とコンビニにあるわけねーだろうが」

「何っ!?」



光也は目を見開いて商品棚に目線を移した。血眼になっておにぎりに探しまわる。少年は再び「阿呆か」と光也を罵った。明は光也の茶髪を目で追いながら「あはは」と軽く笑っていた。



「明ちゃん、ゆうりくん、今日のお昼御飯決まった?」



そこへ、新たに登場する黒髪を2つに纏めた少女。彼女は優しげな声音と、おっとりした微笑を浮かべている。それに反して非常に悪い目付きのゆうりは彼女を「瑞希」と呼んだ。



「こいつらがまだだ。とくに光也が問題だな」

「あ、私はサンドイッチにするね!」

「……問題は光也だけだ」

「まあ急いでないし、まだ大丈夫だけどね」



瑞希は快く明からサンドイッチを受け取った。瑞希の両手には自分と、明とゆうりの分の昼食が収まっている。



「今日も明ちゃんと光也くんに任せちゃうことになるから二人には昼食を十分に摂ってもらわないと」



瑞希は明に微笑みかけたが、ゆうりの納得いかない表情に明は怯えて瑞希の笑顔に答えられなかった。
やがて、選び抜いた昼食を持って光也が戻ってくる。光也の抱えるものはこの四人のなかで一番量が多い。瑞希では抱えきれないので光也の分はゆうりが預かって、瑞希とゆうりが会計をしに行った。
出口付近に移動した明と光也は会計を待つことにする。



「今日こそツバサに届くといいね」

「ツバサだって忙しいんだろ。仕方ないけどさ」

「この前、一瞬だけ反応があったけどノイズが酷くてよく届かなくて。今日こそー!」

「だな!」



明と光也は拳を天へ向けた。