呪い


ルイトはオレの肩から手を離すと、腕を組んだ。そして続きを落ち着いて話す。ルイト自信が落ち着くために。



「なんとか延命させているものの、ソラの寿命が……長いとは、いえない。呪いが原因でな」

「……オレをこの世界に戻した理由は? そもそも、なんであっちに送ったの?」

「ソラをあっちの世界に送ったのは呪いの進行速度を遅くするためだ。でも、ソラの呪いが再び進行すると察知したから呼び戻した。それに記憶の封術もそろそろ解ける頃だったし……、まあ、いろいろあって戻すことにした」

「ふうん……」



オレは左腕を撫でた。なんともないが、感覚は右腕より鈍いのかもしれない。そっとため息を漏らした。

オレはこの世界で何をしていたんだろう。何をして呪われたんだろう。何を思って暗殺をしたんだろう。何を思って拳銃を握っていたんだろう。何を思って人を殺してきたんだろう?
人を殺したあと、オレは何を思ったんだろう……?



「まあ、今日は休め、ソラ。夕食は俺が作って呼ぶから、お前はゆっくりしてろ。突然のことで混乱するだろ」

「……ありがとう」



ルイトは力の抜けた表情で微笑み、「わからないことがあったら何でも聞けよ」と言い残して部屋を出ていった。

オレは自分の部屋を物色しはじめた。
記憶の手がかりになりそうなものを探す。すると、タンスの一番下の段にアルバムを発見した。これは分かりやすい。そう思ってテーブルにアルバムを置き、開いた。

中はどうやら学校生活の思い出がつまっているようだった。
そこには無愛想なオレを中心に、ルイトや、一度しか会っていないシングとミルミも写っていたし、服を届けにきた眼帯の少女もいた。さらにそこには長身の目付きの悪い男子生徒も写り込んでいた。見覚えのあるような気がする人物とオレが写る写真もある。



「異能者の専門学校……だ。オレが世界を渡る前に通ってた学校……」



思いだし、口にする。こんなに簡単に思い出せるなんて記憶喪失というものは案外脆い。いや、これは記憶喪失ではなく、封術師によって記憶を封じられているだけなのだった。頭の中が少し痒くなって頭をかいてみた。

それにしても、本当にオレは男装をしていたらしい。制服からでもよく分かる。
断片的な記憶を思い出しつつアルバムに集中していると、もう夕食時になっていた。



「何してたんだ?」

「アルバム見つけたから見てた」

「ああ、アルバムな。先週、俺とシングとミルミとレイカとジンのみんなで作ったんだよ。お前、アルバムとか作らないだろ」

「そういえばオレ、アルバムとか作らないな……」



呆れた笑い声をされた。
オレは自分の部屋から出て鍵をかけるとすぐ左側にあるルイトの部屋に入った。