現在のオレと過去の僕による自問自答



異変的能力者――略して異能者。非日常的で、常識ではまるで考えられない。でも、一つの世界には通用しない常識でも別の、異なる世界ならばどうかな。グニャリと常識が曲げられる。異世界など簡単に渡ることはできない。そもそも異世界という概念がない。しかし異世界は存在し、そしてとある世界では異能者が存在する。
証拠? だって、僕が異能だからだよ。
僕は過去の君だよ。だから僕が異能者ならば必然的に君も異能者ってことになるね。

オレが異能者? なにを言ってるの?

事実だよ。だって君、視力が異常にいいでしょ? それ、異能者の異能だよ。
異能者には四つ種類がある。能力者、魔術師、召喚師、封術師。君は能力者なんだよ。ちなみに能力者はさらに部類されて君は特化型能力者だよ! 体のあらゆる能力が他の異能者にくらべて一段階高い。さらに君の場合は良眼能力っていう固有の異能を持つからとにかく目が良い。超人的にね。
特化型能力者は人間がもともと持つ能力が、異常に特化した能力者のことをいうよ。他にも普通型能力者、秘密型能力者がある。この三つは全部能力者のこと。そうだなあ、魔術師や召喚師でいう属性みたいなものだと思ってくれて問題はないよ。

は、はあ……?
異能者? 特化型能力者って? 意味がわからないんだけど……。

とにかく君――ソラ・レランスは異能者だってこと。さらに細かく言うなら異能者の中でも能力者。能力者の中でも特化型能力者なんだよ。

待った。あり得ない。

あり得ないと思うのはソラだけだよ。だって異能者が存在しない異世界に飛ばされてたんだから。記憶を封術師に封じられてね。

確かに昔の記憶はないけれど……、封じられたってどういうこと? オレの記憶は事故で――。そう、オレと姉ちゃんだけ生き残った交通事故でなくなって……。

それは嘘だよ。いや、なんていうかな、両親が事故死したっていうのは本当。でもそれは異世界での出来事。君は異世界の住人。ここの世界には本来いるべきじゃないよ。

後藤さんと雄平のいる世界にオレは存在すべきじゃないっていいたいわけ?

だから今、君の仲間が連れ戻しに来たんじゃない。君を隠していた世界が安全ではなくなったから。

どういうこと?

そうだなー。とにかく君、ミソラ・レランスは性別を偽って自分の正体を隠さなければいけない極悪人ってことは肝に命じておいたほうがいいよ。真っ当な一般人じゃない。拳銃を持って刀を振るって人を殺す暗殺者なんだから。