プロローグ
天井、床、壁と四方八方が黒く塗り潰された窓が無い部屋。言うまでもなく、真っ暗だ。蝋燭が僅かに灯り、部屋を明るくしようと試みるが、明かりの力は弱い。 その部屋の中央には円卓になった大きな机がある。その机を囲んでいる人物が四人。
「悲しいお知らせでーす。本部の位置がバレたよ」
「……なんだと? 質の悪い冗談はやめろ」
「本当なのか?」
「それが事実だと言うのならば、我らに証拠を見せてみよ」
円卓のそれぞれ対極に四人の少年、青年、人形が座っていた。ただ、人形はテーブルにちょこんと乗っている程度だ。 一方には、金髪碧眼の、黒いメッシュを入れた顔立ちが非常に良い青年がいる。口調は優しく、少し悪ふざけをしているような声音だ。眉目秀麗、容姿端麗という言葉でさえ物足りなさを覚える。 一方には、黄金色に輝く髪と宝石を連想させる美しい瞳をもった少年が手を組んでいる。少し大きな白衣を身にまとっている。まだ年齢は幼いように伺えるほどの外見だ。 一方には、人形。しかし生きた人間の気配、優男のやわらかく低い声がするため、それがただの人形ではないことを物語っていた。人間がそこにいる。ただ、それの姿が人形というだけで。 一方には、浴衣姿の成人男性の用紙をしている。色素の薄い、毛先だけが濃くなった長い髪を一つの束にまとめている。鋭い光の灯らない眼がギロリと声を発する金髪碧眼の青年に向いた。
「夕方になると制服を着た学生がここら辺をウロウロしてるよ。部下にでも様子を見に行かせたら? 周辺の学校とは違う制服だからすぐ解るんじゃない?」
「ほう。対策はあるのか?」
「ああ、そのことなら私がすでに聞いたぞ」
すらすらとその口から情報を流す金髪碧眼の青年は、微笑を浮かべていた。愛想のない男性と違い、声だけの人間は愛想のよい声音ででしゃばった。少年も無言で人形を見る。
「ソラを呼び戻そうと思う。ソラが戦力に加われば利益はあるぞ」
「はあ? 呼び戻すときの損害はどこが負担するのか考えているのか?」
「お前に決まってるでしょ」
「今なんと言った貴様!?」
「お前だろ、って言ったの。聞こえなかった?」
「どうやら貴様は死にたいようだな」
「上等。返り討ちにしてあげるよ」
仲が非常に悪い青年と少年は殺気を放ちながら口喧嘩をしていた。だが、二人の口喧嘩はどうにも現実味を帯びていて今すぐにでも殺し合いを始めそうなものである。 呆れたように男性は目をそらし、そのまま閉ざしてしまった。
「はははっ。元気だなあ。でも、まあ、二人とも落ち着け。今後のことをこの集会で話し合おうじゃないか」
人形は仲裁に入る。彼の声を聞いて一旦は喧嘩をやめる二人だが睨み合いと殺気のぶつけ合いだけは続行していた。
彼ら四人は巨大な組織のボス。もとは各々一つずつの組織を纏め、仕切っていたボスであるが、いまは合併して四人がボスとなっている。
この組織は今、別の組織と緊張関係にあった。
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