協力要請


      

「ま、まあ、落ち着けよ、二人とも」

「そうだよ。ね。今の私たちは仲間なんだし……」


睨み合う明と美紀の間に光也と瑞季がわって入り、慌てたように仲裁をする。明はそれで大人しくなったが、美紀のほうは違った。鋭い目付きになったまま、彼女は腕を組む。


「いいわ。あんたなんかに構ってる場合じゃないもの。好きになさい」


ふん、と鼻をならしてから美紀は出ていった。明に呆れたといった様子である。助かった。オレは拷問なんか受けずに済んだ。『あの事件』のあとのような拷問はまっぴらごめんだ。敵として明は都合が良い。まあ、相手のことなんか知ったことではないので考えることは止めよう。


「今日から俺たちが交代で見張るから、変な気を起こすなよ」


ゆうりはオレにガンを飛ばしてくれた。オレも飛ばしておく。
早くここから脱出して組織に帰らなくては。しかし、その前に。


「過去から来たってさっき言ってたけど、どういうこと?」


なにも、情報を聞き出す立場は明たちだけじゃない。
つい先ほど光也が口走っていた、重要な情報。協力を仰ぎたいだかなんだか言っていたわけだし、教えてくれるはずだ。ま、端から協力する気なんてないんだけど。


「ああ、そのことな」

「そのままの意味だ。俺たちは現代の異能者じゃない。何十年前だか、何百年前だか、何千、何万年前だかしらねぇが、そんな昔々から迷い混んだ」


ゆうりは困った様子など見せなかったが、他三人は眉を避けて困り果てた表情を作っていた。
普通に考えて、意味がわからないし信じられない。「寝惚けてんの」と一蹴したいところ……だが。オレもついこの間まで異世界にいたのだ。過去から迷い混んだって不思議ではないだろう。


「……もしかして、ツバサを求めていたのは」

「ツバサ、不老不死だからね。ここが未来だったらツバサは絶対にいる。ツバサは私たちの友達なんだから」


明たちの話を信じたとしよう。
つまり、遥か過去の明たちとツバサは知り合い。過去に明たちとツバサはすでに知り合っていた。そして未来、つまり現代に何らかの原因で迷い混んだ彼らは、過去に帰るために知り合いのツバサとの接触を目的にした。ツバサなら何か知っているだろうと。


「今のツバサくんが、まさかあんなことになっていたなんて、想像もしてなかったけど……」


瑞季がこっそり呟いた。オレにはハッキリ言葉を聞き取ることは出来なかったが。


「私たち、困ってるの。お願い、ソラ。協力してくれないかな?」

「嫌だ」

「ええー、即答ぉー?」

「なんでオレが組織を、ていうか、ウノ様を裏切るようなことしなくちゃならないわけ」


顔を反らすことなく、まっすぐ見定めながら断ってやると、オレと目線を合わせていた明は溜め息と脱力をした。