悪夢
 




(……さっきのは、夢…か?)



ソラは暗闇のなか向き合っていた少女が気になっていた。
少女は自分の事を"呪い"と言っていた。

しかしソラは彼女を"呪い"としてではなく、一人の人間として付き合った記憶が確かに存在していた。



「今日の学校は休みなさい。」

「ナイト…」



マグカップを二つ持ったナイトがソラに声を掛けた。ココアの入ったマグカップを一つソラに渡し、ナイトはベッドの空いたスペースに座った。



「促進はたまにあることだったけど、あれは今までで一番危険よ。」

「そんな、に…」

「だから今日は学校を休んで、夜に備えなさい。
水の組織として、あなたは戦力になるわ。」

「うん」

「私たちとしても、ソラは大切な仲間なの。」



負けないで―――

ソラはマグカップのココアを見ながら何度も頷いた。


ソラの所属する組織は"水の組織"といって暗殺を含めた、汚い仕事を承っている。
ウンディーネが纏める水の組織の他に、サラマンダーの炎の組織、ノームの大地の組織、シルフの風の組織がある。炎と大地はそれぞれ情報、研究と分かれている。ちなみに風の組織は傭兵。

この四つの組織のメンバーのほとんどが未成年である。

各ボスは名を轟かせるほど有名であるが。
未成年ばかりを雇うには理由があり、単純に若いほうが活気があるから。というふざけた理由から、若いほうが育てがいがある、治安組織に見つかりにくいと、様々だ。
これらの組織は四つの合わさって一つと思われがちだが、実際には深い同盟を結んだだけだ。


ちなみに、ソラの通うこの学園の創立者は炎の組織のボスである、サラマンダーだ。



「ウンディーネ様は、ソラの容態を心配しているの。私もよ。大丈夫?」

「平気、だよ」



自分の尊敬するボスの名を出されてはソラはそう答えるしかない。
実際に、昨夜よりは落ち着き、平常に戻りつつある。









ソラが学園に行かず、寝ている間、学園ではルイトたちがいつもより少し平和な時を過ごしていた。



「ソラが休むなんて、珍しい事があるもんだな。」

「あぁ、それ分かるぞルイト。つかどうせ休むならレイカでよくね?」

「ひっ、酷いよジン!」

「あ゙?」

「ご、ごごごめんなさい!!」



屋上にて。
ルイト、ジン、レイカ、シング、ミルミが集まって昼食をとる。

シングとミルミ以外の3人が雑談に没頭しているなか、シングとミルミには険しい空気が流れていた。




「……ミルミ」

「はい、なんでしょうか、マスター。」

「放課後、ソラの見舞いへ行こうか」

「……お見舞い、ですか?」

「ああ。昨日までピンピンしていただろう?一体何があって今日休みをとったのか、気になって仕方がないんだ」

「わかりました。私はマスターについていきます。」



コクリとミルミが頷く。それを確認したシングは、昼食であるパンをかじった。

シングの赤い眼は、どこか別のところを睨んでいるようであった。その眼は、黒髪によって遮られ、誰もシングがそんな眼をしているとは思っていなかった。

表情を緩めたところを見せたことがないミルミは何をおもって、考えているのか。

他の三人は、シングとミルミの中である確信が芽生え始めていることは知らずに雑談をすすめていた。