"呪い"の発作
 



ビチャ、ビチャ、



「ノルマ達成……っと」



月が街を照らす手助けをする深夜。

今宵もソラは一人の人間を殺した。夜活動する時のソラは男装を解いている。
左手に握る刀からは絶え間なく血が滴り落ちてい
た。

バサ、とソラは着ていたコートを脱ごうとした。が、ナイトの手によってそれはかなわなかった。



「いつ、誰が見ているのか分からないんだから脱がないの。」

「えー。でもゴワゴワしてて動きにくいんだよ?」

「我慢しなさい。」

「嫌だって!!じゃあ、もし僕が――――……。」

「何?………って、ソラ?」



突然ソラは言葉を止めた。足はフラフラと頼りなく歩む。

ナイトがすぐに支える。すると必然的に距離は0になった。そして隣にいるときには聞こえなかった小さな小さな唸り声がナイトの耳へ届けられた。



「急に…あたま…が凄く…痛くなっ、て」

「頭痛!?急にって…。左腕は!?」

「あはは………っ。千切れ、そう。…ってか千切れるか…も。」

「左腕の袖を捲るわよ。即席で私が診るわ」



近くのベンチにソラを寝かせ、ナイトはソラの袖を捲った。

そこに刻まれているのは、"呪い"に縛られている証。ソラの肩から手首にかけて広がる、文字、記号。

しかしソラの生きる時代には存在しない文字と記号だ。
これを読める者は、この世界でもわずかの人間だけだ。

ナイトは息を飲んだ。

左腕に刻まれている文字と記号が震えているのだ。
決してソラの腕が震えている訳ではない。

一方、ソラはすう、と眠るように意識を手放していた。