始まりと終わりは同時に
 










一年後、ある地下室に少年がいた。目の前にいるのは自分とそっくりな容姿をもつ――――死体。



「どう、ですか?」



少年が後ろの人物へ声をかける。後ろにいたのは外見に幼さを残すノーム。



「やはりあれの複写は不可能だ。」

「……そうですか。」

「今はなんとか止めているが、それもいつ突破されるかわからん。」

「わかってます。」

「最高で二年だ。」

「それまでに成し遂げましょう。」



感情がこもっていないあおと赤の瞳を少年は死体から背けない。

肩にかかる黒い髪をサイドの低い位置でまとめ、腰には銃を吊っている。少年はあきらかに一般人とはまとう空気がちがう。

表情をかえない少年は後ろを振り返った。



「今、ツバサから戻ってこないかって誘われてるんです。」

「そうか。お前はどうしたいんだ?」

「正直どっちでもいいんですが、戻ればメリットがあると思うんです。まぁ、ウンディーネ様は戻す気でいますがね。」

「戻るならばさっさと完成させなければならないな。」

「……お願いします。」



━━━━━━━



地下室から外へ出た少年はすぐに裏路地に入っていった。
フードがついた黒い少し長めのコートが風に揺れる。

少年はポケットから紙を出した。



「ッチ、またマフィアの相手かよ。」



愚痴をこぼした。
半年後の再会を知らない裏の世界を知る少年は昼間でも暗い裏路地へ消える。

すべては道化師の掌で踊らされた結果。

だれが味方でだれが敵か
だれが正義でだれが悪か
確定しない世界で少年は今日も息をする。





end.